一節 八部 ページ8
「へっざまぁ‼︎」
ナオは遠くへ飛ばされ散っていく敵を馬鹿にした。
黒龍はナオを呼びながらそちらを見ると呼ばれたナオと目が合う。黒龍は見たところ怪我もなくケロッとしているナオにほっと胸を撫で下ろした。が、ナオは目を見開き、黒龍へ手を伸ばす。
「黒龍っ‼︎」
油断
振り向けば黒龍の後ろ、ゴブリンがメイスを振り上げていた。追いつかない。
ナオは瞬時に落ちている黒刀の鞘を拾い上げ黒龍の方へ投げ槍のように思いっきり投げる。
ただ、黒龍は遠い距離にいて、どう頑張っても確実に届かない。無理かとナオは少し諦めるが、せめてもの悪足掻きにと、飛ぶ鞘に魔力を込める。
するとゴッッと痛い音を立て、その後ドサッ、カララ、と二種の音を鳴らした。黒龍の頭スレスレを通ってゴブリンの顔面直撃したのだ。
ナオは投げたポーズのまま固まり、倒れたゴブリンと黒龍を交互に見る。少し間があってからガッツポーズを取り「いょっしゃぁ！？！！」と時間差で喜んだ。
「喜んでる場合かっ…主！！」
「今の見た！？」
「ったく……！！」
興奮状態のナオは話を聞かないと理解している。黒龍は話すのを諦め、ナオの元へ走って駆け寄る。
「ねっクロ！」
とても楽しそうなナオに黒龍は笑みを零しつつ、こちらに手を伸ばすナオに手を伸ばした。
刹那
ドコォオ！！と大きな音が響く。急な出来事に二人の息は止まる。
急にナオの後ろの岩壁が壊れ、巨大なゴブリンが現れたのだ。音の正体を突き止めるべくナオは後ろを振り向いて、その正体である巨大なゴブリンを見た。固まる体。黒龍は足を止めることなくナオの元へ走り、必死にナオに手を伸ばすがナオには届かず空を切った。
巨大ゴブリンはナオを掴む。
呆然と立ちすくんでいたナオは、突然のことに体を動かせなかった。
ハッと気を取り戻せばナオは黒龍に手を伸ばす。それは救いを求める一人の少女の姿で…
黒龍はキッと巨大ゴブリンを睨み、握る刀を両手に添え力を込める。
「【我が名は漆黒の龍、黒龍なり。汝、その力をこの場にて】」
「【解き放ち給え】」
詠唱にナオの左目が反応し、魔法陣を浮かび上がらせ、黒龍が持つ黒刀の、先程赤く刻まれた文字が光り輝く。
ゴブリンに目を向けた黒龍の瞳は怒りに燃えていた。
「俺の主を離せ………その汚ェ手で俺の主に触んな、このゴブリン野郎！」
黒龍は高く飛び上がり、刀を振り回しゴブリンの身体を上から下へと切り刻む。
「死ね」
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作者名：宇宙ノ彼方 | 作成日時：2018年12月26日 11時
