一節 七部 ページ7
「依頼だから。困ってる奴がいるってことだから、それに龍がいるかもしれないし、くるかもしれない。こんな場所、龍が危なくて仕方ない。神龍の為、困ってる人の為…危険は排除しなければ…」
最後の方は独り言のように呟く。黒龍は溜息をひとつついたら、子供をあやす様に優しく話をした。
「主、それは主も同じだ。主も人も龍も同じ。龍に危険なら人なんて尚更に危険………だが主は、この依頼を諦めたくねぇんだろ」
落ち着いた低い声はナオの頭に心地よく響く。拗ねた子供のような声で「…うん」と少し頷きながらナオは答え、それを確認すると黒龍は足を振り向くように滑らせて地面に擦らせながら後ろを振り向く。ザザザと砂の音を鳴らして。
ゴブリンや黒煙がこちらへ向かってくるのが見えた。
「なら俺は、主を守る為、こいつらを一人残らずぶっ殺さなきゃなんねぇな」
少しばかり主の力も借りるかもしれねぇと苦笑しつつ黒龍はそう言うと、ナオも頷いて『頼れ』と一言。その言葉に少しはにかみながらゆっくりとナオを降ろし、敵を見つめる。
黒刀をしっかりと握り構える。求むものは何か、感じ取った黒刀に絡みつく龍は、まるで鎖のように重く、硬い。それを壊すかのように力いっぱい、でも大切に慎重に、丁寧に抜いていく。
龍は吠える。
鞘から抜くと同時に耳鳴りのような金属音が響き、鎖の様な重みが解き放たれる時には、絡みついた鞘の龍も金属音の耳鳴りも無い。鞘から抜いた黒刀の刃の部分には、先程にはなかった文字が赤く刻まれていた。
【覚醒:黒刀・迅竜刃】
「…ふぅ」
黒龍は溜息のように深く深く息を吐くと敵の中へ飛び込み、容赦なくゴブリンを切り刻んでいく。上からは黒煙がナオの方へ向かってきた。
「やっぱりか」
その行動が分かっていたようで、余裕そうに歯を見せ笑うとナオは思いっきり両手を横に広げる。
(三………二……一…)
目を瞑って集中する。三秒、心の中で数えたらナオは目をカッと開いてすぐそこ、目の前に向かってきていた黒煙の、来るだろう位置に思いっきり手を叩いた。時が止まったようにしんとしている中、叩いた音の波動が水の波紋のようにゆったりと全体に流れる。その瞬間、その波動が時が進むと同時に風となり勢いよく流れ、ぶわっと敵に襲いかかる。
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作者名:宇宙ノ彼方 | 作成日時:2018年12月26日 11時