一節 九部 ページ45
そんな目で見るな、自分も気づいたらこの世界にいたんだ。ナオは思った。
男は呆れたような目をすると、期待した返事がなかったからか「まぁいいや、んじゃ」とつまらなそうに去っていった。
ピコン
電子音が響く
―――〔
【忘れもの探し:報酬 記憶の欠片】
************
帰宅後、ナオは何となく橙龍に渡さなきゃいけないと思い橙龍を探した。
「シオ」
「主君、どうした?」
「これ、シオの?」
貰ったお守りを橙龍に見せると、橙龍はビックリしながらナオの手を掴み、お守りを至近距離で見つめた。
「こ……これ」
「シオのか?」
「あぁ、もう見つからないかと思った」
ナオからお守りを受け取ると胸の中で大事に握りしめた。
お守りは優しく光り輝き、橙龍の中へ入っていった。
(中に入ってくってことは記憶保持アイテムだったのか)
無くなっていただろう記憶が帰ってきて橙龍は涙を流した。ポロポロと大粒の涙を。
「っ……見つかってよかった………ありがとう、ありがとうっ!」
「ふぅ……よしよし」
泣き崩れる橙龍をぎゅうと抱きしめ、頭をゆっくり撫でる。慰めるようにゆっくり。
「…いいのか?」
「今回は特別」
「……そうか」
残りの二人の神龍は物陰から二人を見守っていた。
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「わかんないねぇ神様の考えてる事は……」
夜、屋根の上___赤髪が揺れた。
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ナオはひとり考えた、男の質問の答えを。
【「キミ、なんで龍従えてるの?」】
【「不思議なんだよね……幼い女の子が龍を従えて………何が目的なの?」】
「自分でもよくわかんねぇよ………」
己は異端でイレギュラーな存在でこの世界にとって運命を左右するウイルスでしかない。
それは自身が一番理解しているつもりだ。
「ってか幼くねぇよ!!」
「うるせぇ」
「ダメだよ〜?主様に敬意のないこと言っちゃ」
「いや、敬意は別にどうでもいいけど」
「ってかお前はどさくさに紛れて主に抱きついてんじゃねぇよ」
「…てへっ☆」
「「…かわいくねえぇ……」」
「二人してひどぉい!」
やっぱ楽しい方がいい。難しい事なんて考えないで何も考えないで、ただこうやってバカ騒ぎしてる方が……すると扉の前からティナの声が静かに聞こえた。
「もう夜遅いので静かにしてくださーい!」
「「ゴメンナサイ」」
やっぱ何かは考えようかね。
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作者名:宇宙ノ彼方 | 作成日時:2018年12月26日 11時