夢語神龍壱【名前固定】 (ページ36)

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二節　九部ページ36

「主様乗せたかったぁ………何が悲しくてヤローを…」
「しらね」
「マジで喧嘩すんなよおまえら」
「ふぇぇぇん」
「「キショい」」
「二人とも酷い!!」

　争いに負けた金龍が橙龍を運んでいくことになった。ただ争いは移動中にも続いていたが。
　あれだけ騒がしくしていれば橙龍も勿論目を覚ましてしまう訳で

「う……うぅ………」
「おっ起きた？」
「…おぉ………うぉ！？なんだ！？」
「あぁぁあぁ、暴れちゃあかんの、落ちるよ」

　橙龍は空を飛んでいること、それから神龍に乗っていることに驚いていた。それと同時にナオに顔を向けた時には

「………俺も、龍になれんのか？」

　その期待に溢れたキラキラとした目に、子供のようだと
「勿論」
ナオは妖しく笑った。

「あっははっ!!すっげぇ！！」

　龍になった橙龍は子供のようにはしゃぎ、空を泳ぐようにその長い身体をうねらせていく。

「ほんっっっとに楽しそうやなぁ」

　その様子にくつくつと喉を鳴らして笑うナオに黒龍は思ったことを口にする。

「龍の姿になったの久々なんだろ」
「ぁえ？そうなの？」
「あ〜名前貰えないと龍になれないからねぇ〜」

　知らない情報に首を傾げていると黒龍がそれについてナオに教えた。

「主、名前を授けた時一度龍になるだろ？あれは名前を授かったことで、かかってた呪いが解けたようなもんだ。その呪いは、人に見えない、龍になれない、とかその他諸々、色々あるけどな。神龍とか神聖で人ならざる者にとっては【名】はとても大事なものだ、それを忘れるなよ」
「………呪い…か」

　ナオは橙龍を見る。
　美しく輝くその姿は、その忌々しい呪いが解かれ嬉しそうに飛び回るものなのだと。

(なら尚更はやく、九頭の龍を探していかなきゃ)

【集めたらどうするの】

　どこからか声が聞こえた気がした。
　集めたら…………どうすればいいのだろうか。
　自分は一体何者なのか。
　何故か神龍の存在を知っていて、その神龍を集める為旅をする。

　集め終わったら何があるのだろう？

　何か変わるのだろうか

　何か起こるのだろうか

　集め終わった先に何が………

　…………わからない

(……今は考えなくていいか)

　夕焼け空、風に吹かれながらナオは黒龍の上でゆっくりと目を閉じた。