ニ節 七部 ページ34
そう聞いた瞬間、男は刀を抜き刃をナオに向ける。
「対価はなんだ、お主らは何を対価にして……」
ナオは声を出せば、少し動けば、殺られるのを知っている。お前に発言権はないということだ。つまりは黒龍と金龍が如何にかして男が求める言葉と共にナオを救い出すか。冷静にいるナオでも死ぬのは怖い。静かに冷汗を流しながら動かずにいると、黒龍が声を出す。
「対価というものが俺が考えてるもので合っているのなら、俺の対価は我が主に忠誠を尽くすこと、主を護ることだ」
「じゃあそうなると僕の対価は主様に僕の全てを捧げること…？」
男は目を見開くと、もうひと押しするように黒龍は言い放つ。
「勿論俺は自らそう言った」
「僕もそうしたいからしたよ」
男は刀をゆっくりと下に降ろす、これで大丈夫と思われたがそんなことはなく、男は刀を振り上げた。
「っそんなこと信じられるとでも……!!」
振り下ろされる刀にナオは微塵も動かなかった。それどころか、少しふっと笑った気がした。
刀はナオに掠ることも無く＿＿
「流石クロ」
「主は俺を過信しすぎだ」
「何年いると思ってる、信じてるに決まってる」
黒龍が自身の刀で弾き返していたのだ。
男は遠くで刺さる刀に慌てて鞘を手にする。
「すごぉ」
「お前少し黙れ」
男は突然のことに動揺を見せるがそれでも警戒は解かず、鞘でも戦う姿勢を見せる。
「ねぇ」
「っ…」
「何故そんなに信じようとしない？」
「逆に何故お前が信じるに値する人間だと思うんだ」
「それもそうか」
「俺は…お前のような特殊な人間に騙される馬鹿共を何人も見てきた。皆騙されて扱き使われる奴 隷だ。見えるばかりで力なんざない自身を過信しすぎた阿呆共。それらを信じて疑わない馬鹿野郎共。何故こうも馬鹿ばかりなのだ、反吐が出る。裏切られる怖さを知らんお前らなんざ、あの馬鹿野郎共と同じだ。俺は誰の下にも付かん。絶対に、だ。」
その言い口は過去に裏切られたことがあるということ。其れを知っているから一歩踏み出すことが出来ない。なら一歩踏み出す為の切っ掛けを渡せばいいだけ。自分は裏切るなんてことはしないこと、絶対に仲間を見捨てるなんてことをしないこと。
「そう簡単に信用してなるものか」
そう鞘を武器に睨んでくる彼に手を伸ばす。
「は？」
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作者名：宇宙ノ彼方 | 作成日時：2018年12月26日 11時
