一節 十七部 ページ17
「……なんで…とは」
「そのひととは、キョウダイとかオサナ…ナジミ？とかでもないんでしょ？なんで？」
「…大事なのに理由はない、俺が護ると決めたから」
「なんでそんなにだいじなの？」
「…何故、そんなに大事にこだわるんだ」
ラグナは少しキョトンとすると、うーんと首を傾げた。
「わかんないから…？」
「わからない？」
「【だいじ】がなんなのか。なんでそのひと【まもる】の？なんでそんなに【だいじ】なの？なんで【ちかった】の？」
狂ったかのように何で何でと質問する。
黒龍はそれでも落ち着いて、冷静に、思った理由を答えた。
「…俺が護りたいと思ったから護っている。俺が大事だと思ったから大事にしている。俺が誓いたいと思ったから誓った」
「なんでそうおもったの？」
「……わからない、初めてあった時、あいつは独りだった。だから俺はあいつの傍にいる、あいつを護っている。特に意味は無い、俺がしたいからしてるだけだ」
ラグナはそれを真剣に聞いたが、結局首を傾げてしまった。
「よくわかんないや」
「多分いつかわかる」
「ふぅん…」
黒龍は立ち上がり道の先を見る。
未だ不服そうな、不満足そうなラグナをみて、黒龍はまた少し話した。
「…一つ、理由をつけるとするなら…俺も主と同じ【独り】だった、だから…だからこそ、傍にいたいと、独りにしたくない……と、そう感じたんだと思う」
「！」
ラグナは顔を上げて黒龍を見た。
遠くを見る黒龍のその瞳は誰かを映していて、それはまた、どこか暖かさを感じられた。
(ずっとずっと、つめたい【め】だったのに、そのひとをおもうと…)
「もう行く」
「まって」
「？」
「おじさんね、あっちいってった」
ラグナは正面の道を指さす。
「？」
「ぼくと、いっぱいおはなししてくれたから。おれい」
「……俺も一つ聞いてもいいか」
「うん、いいよ」
「……お前とそのおじさんとやらとはどういう……」
その質問にラグナは指をさしていた手の力を緩め、俯いた。
「【なかま】だけど【なかま】じゃない、アイマイなカンケイ……かな」
「…お前はそれでいいのか」
「しつもんはいっこだけなんでしょ？」
「…すまない」
黒龍はラグナに背を向け、おじさんが向かったと言われた先に向かっていった。
その後ろ姿を見送りながら再び足を上げて体育座りをして顔を膝に埋める。
「……あまりいいとはいえないかな」
(ラグナはああいう関係だから、俺に主との質問を……)
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作者名：宇宙ノ彼方 | 作成日時：2018年12月26日 11時
