【第一章 一節】 九頭龍、旅の始まり ページ1
「主、どこ行くんだ」
「え〜、次の龍のとこ」
人が賑わう中央街、レンガ畳の道を男女は歩いていた。
前をスタスタと歩く白い髪の彼女は彼の質問に適当にあしらう様な返事をし、黒髪の彼はいつもの無計画さに呆れた。はぁ、と一つため息を着けば、突然彼女はバッと彼の方に振り向いて、わなわなと震え叫んだ。
「……っ…だってクロと契約を結んでから、もう十年以上たってる！」
クロと呼ばれた男はナオの感情的に叫んだ言葉に、仕返しとでも言うように適当に「そうだな」とあしらう四文字を呟くだけの簡単な返事した。その呟きを聞いてか否か、彼女はまた投げやりになって叫ぶ。
「あちゃこちゃ行かないと見つからんがな！」
そりゃ駆け足にもなるわと、叫ぶ悲鳴の言葉に彼は、はっきりと計画性の無さに文句をいう。彼女は「う…うるさい！」とベタな図星の返しに尚更彼はため息をついた。
リリリ……
着信音が鳴る。
それは彼女のポケットからで、彼は鳴っていると呼びかけた。
「ったく、誰だよぉ」
彼女はブツブツと呟きながらポケットから鳴っていたもの、【携帯端末】取り出し、それの画面を見た。それは鳴り止むことなく非通知の三文字を映し出していた。
「………」
彼女は電話に出るか悩んでいると、ピッと端末が機械音を鳴らした。これは留守電に移行された合図だ。
二人は顔を見合わせて端末を見つめるが、電話の相手は何も話すことも無く、ツー……と音を鳴らして消えた。
「「…え？」」
無言で切ったのだ。彼女はガシガシと頭をかいてそのまま頭を抱える。ひたすらに非通知と表示されたその電話履歴を見て彼女はため息をついた。
「………この非通知、最近何度もこんなのするんだよなぁ」
「ストーカーか」
「こんな不細工ストーカーしてどうすんの」
「………人の好みだからな」
「微妙に間を開けるな」
「「………」」
無言で顔を見合う二人。
彼女はこの空気から脱するため、棒読みだが声をさらっとかけると足を進めはじめた。
「よし、依頼役場行くか」
「あ、逃げたな」
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作者名：宇宙ノ彼方 | 作成日時：2018年12月26日 11時
