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「、すきなひと？」
「うん。ママにはナイショだよ」
ぽぽぽ と頬を染めてはにかむように笑うAを見て、心臓がじくじくと痛んだ気がした。そんな表情、俺の前でしたことないのに。ここにいない奴を思い浮かべて照れたように笑うAを見ていると、心臓の奥からじわじわと暗い感情が滲み出るような感覚になる。
「おれより、すきなの？もう一緒にいてくれない？」
「ぅえ？！」
不安げに瞳を揺らしながらAの服の裾をきゅ、と掴んだ。ゆらゆら揺れる俺の瞳を捉えたAは驚いたようにこちらを見て、すぐに嬉しそうに笑った。
「ユンギくんってば、だいじょうぶだよ。△△くんもすきだけど、私、ユンギくんのおねえちゃんだもん。ユンギくんと離れるわけないよお」
「ほんと？ほんとにほんと？おれがさみしい時もずっと一緒にいてくれる？」
「うん！だからほら、残りのクッキーも食べよ〜」
「Aヌナ、約束だよ」
わかったってば〜と笑いながら、残りのクッキーを頬張るAの姿に、今はこれでいいかと小さく息を吐いた。Aが俺から離れようとしないなら、それでいい。俺のずっとと、Aのずっとが同じかはわからないけれど、Aは約束してくれた。たかが口約束でも、安心する俺はどうかしているのかもしれない。でも、それでいいんだ。知らない奴がAの心にいるのは嫌だけど、今傍にいるのは俺だ。時間はたっぷりある。ゆっくりでもいいから其奴を追い出して、俺のにすればいい。本当はAとずっとずっと一緒に入れるように、ふたりだけの場所に行きたいけど、幼い俺にはどうにもできない。だから、今はこれで。
「Aヌナ、ずっと一緒にいようね」
「ユンギくんってば今日は甘えたさんだねえ」
「ずっと一緒にいるよお」そう言って唇の端にクッキーの欠片を付けたまま、綿菓子みたいに甘くふんわり笑うAヌナの顔を、俺はきっとずっと忘れないだろう。
続く (更新停止中)
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作者名：みいこ | 作成日時：2022年9月6日 15時
