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Aに会えなくて落ち込んだ俺は、ひとり毛布にくるまっていた。両親もAと遊ぶと意気込んでいた俺が、しょんぼりと帰ってきた様子から察し、そっとしてくれている。
毛布にくるまって考えるのは、やっぱりAのこと。俺は、知りもしない幼稚園という存在が嫌いになりそうだった。俺からAを遠ざけてしまう幼稚園がなくなってちゃえばいいのに、と毛布の内側からそっと祈った。
「あれ？ユンギくん寝ちゃってるの？」
「？！」
静かな部屋に突然陽気な声が響いた。驚いて毛布から顔を出すと、ずっと頭の中に居座っているAの姿があった。
「あ、起きてた」
「Aヌナ…？」
「ユンギくん、わたしのお家に来てくれてたんでしょ？待っててくれたらよかったのにぃ」
Aの姿がいまだに信じられなくて目をぱちぱちと瞬かせる。何度目を擦ってもAの姿は消えず、ようやくAが俺の家に遊びに来てくれたのだと実感する。そんな俺の姿を見て「なにしてるの？」とクスクス笑うAに、さっきまで胸の奥で
「ヌナ、おれに会いにきてくれたの？お友だちは…？」
「〇〇ちゃん達と遊んで、帰ったらママがユンギくんが来てたって言うから、わたし来ちゃった！」
にこにこと笑うAに俺まで頬が緩む。Aは俺に会いに来てくれた。俺の知らない友達と遊んでも、俺のところに帰ってきてくれた。
「ふへへ…Aヌナ、ありがとお…おれ、うれしい」
「最近あんまり一緒に遊べてなかったもんね、私もユンギくんと一緒にいるの楽しいからすき」
「お、おれも！ヌナっすき！」
「…あ、そうだ！」
ママからクッキー貰ってきたから食べよ〜と言って、Aは大きめのクッキーを半分に割ってくれた。ふたつになったクッキーの、大きい方を俺に差し出してくれるヌナに、胸の奥がきゅううとする。毛布から抜け出した俺は、Aと並んで座り、もぐもぐとクッキーを頬張った。ほんのりとハチミツの香りがするそれは、甘ったるくて、幸せだった。
クッキーを食べながら、他愛ない話をしているとAが思い出したかのようにあ！と声をあげた。
「もぐもぐ……ん、ヌナどうしたの…？」
「ユンギくん聞いて！あのね、わたし、すきなひとができたの」
ふたりしかいない空間で内緒話をするようにそっと紡がれた言葉を、すぐに理解する事が出来なかった。
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作者名：みいこ | 作成日時：2022年9月6日 15時
