ドS彼氏の彼女攻略【赤司征十郎】

31.高宮朱雀 ページ32

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驚いて、固まるA。



「……落ち着いた？」

『落ち……え？』

「辛そうだったから」

『つら……そう……？私が……？』

「気づいてない？さっき、身体が震えてた」

『……』



言われてAは、自分の手を見る。
今は震えていない。



だが、征十郎に抱きしめられる前はかなり身体が震えていたという。
無表情でも、怯えているのは征十郎にだってわかった。



だから、思わず抱きしめていた。
また拒否されるかもしれない。
でも、そんな事より今は震えている彼女をどうにかしてやりたい。
誰かに対してこんな事を思ったのは初めてだった。



Aの笑顔を知っているからだろうか。
控えめだけど無邪気に笑った顔。
好きなものについて話すときのあの子供っぽさ。



もし、家族関係の事でこんな誰も寄せ付けないような冷たい性格になってしまったのなら。



『……私を、落ち着かせるために……今、抱きしめたの……？』

「あぁ」

『……赤司君って、そういう事しないと思ってた』

「そういう事？」

『他人なんてどうでもいいタイプかと……』



そういえばそうだなと征十郎も考え込む。
他人の事についてここまで考えた事は無い。
誰もかれも同じラインに居て、来るもの拒まず去るもの追わず、自分以外の誰かがどんな状況におかれようと知った事ではない。



それは今も変わっていない。
じゃあ何故Aに対してはどうにかしてやりたいと思った？
自分には全く関係無い事なのに。



……逆にこれが、高宮以外だったらどうだろう。
……なんの感情も沸かない、どうでもいい。



『……ありがと、赤司君』



Aが、征十郎に少しだけ笑いかける。



『冷たくて何考えてるのか良く分からないって思ってたけど……少しだけ、見直した。私はもう大丈夫だから……体育館に戻るね。夜桜さんが朝練の準備に１人で大変そうだし』



そう言って、タッと小走りで体育館に戻っていったAの背中を見て



それは……お互い様だろう。



と、征十郎が呟いた。



Aの征十郎に対してのイメージが、今僅かに変わったように征十郎もAのイメージが最初と比べ変わっている。
もっと、知りたい。
相手に対してそう思ったのはAが初めてだった。



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