微熱

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昼休み、お弁当を食べ終えて事務作業をしていると保健室のドアが開いた。


1人の女の子が
まっすぐ私のいる机の前まで歩いてきて。




えっと...

確かこの子は3年生の足立さん。

バスケ部のマネージャーだったはず。

去年部活中にケガした子に付き添ってここへ来たから覚えてる。







｢どうかした？｣




訪ねるけど、その子は何も言わずに私にスマホを見せてきた。







｢先生って高嗣のこと好きなの？｣





遠くからズームしてあるのか、画質は荒いけど足立さんの見せてくるスマホの画面には
二階堂くんと私がカフェで座ってるところが写ってた。






｢これは...たまたま一緒になって、｣


｢たまたま会って、
こんな江ノ島のカフェでお茶するの？｣






だよね。



言い訳するのも
余計に変な誤解を与えちゃう、か。






｢..ごめんね。
確かに二階堂くんと出掛けたけど、
足立さんが思ってるようなそういう事は一切ないから｣





ふっとキスされた事が頭をよぎったけど。



あれは一方的だったし、
キスされたからって気持ちがどうこうなることなんてありえないし、あっちゃいけないことだから。







｢..生徒とこういう事してんのバレたら
まずいですよね｣


｢本当に、そういうのじゃないから｣


｢よくここに高嗣が来てるのも、
先生が呼んでんの？｣


｢...足立さん、
そんな事あるわけないでしょ？｣





苛立って喋る足立さんを刺激しないように、
なるべくゆっくり落ち着いたトーンで話す。





｢これ以上高嗣に付きまとうなら、
この写真ばら撒くから｣




キッと大きな目で睨んだ後、
足立さんは保健室を出て行った。






よりによって、
生徒に見られちゃってたなんて。




しかも、
足立さんも北山先生のクラスだったよね。




今どき拡散なんてされたら
どこまで広がるか分からない。




大事になる前に足立さんと話して
誤解を解かないと。

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