122 握手 ページ31
「俺なんて、何にもしてないよ。」
私が御礼をいうと相葉君はそう謙遜した。
「それと同時に──
自分の思うままじゃいられない現実もあって……
記憶喪失になる前の生活のこと。
私の両親や婚約者に対してどうしたらいいかわからなくて──。」
相葉君は私の言葉を聞いて
「コンヤクシャ……。」
と呟いたきり絶句した。
「相葉君が私のこと好きって言ってくれて本当に嬉しかった。だけどその人に私、ちゃんと結婚はできませんって伝えていない。何もかも中途半端なまま……
だから今は相葉君の気持ちにこたえることはできない。
……ごめんなさい。」
心からの気持ちを込めて頭を下げる
「……なんか、頭ん中がごっちゃごちゃで訳分からなくなってるけど……
Aちゃんが俺に言いにくいことをちゃんと伝えてくれて……Aちゃんの想い……っていうか考えてることが分かって嬉しかったし……
あー、駄目だ全然頭の中整理出来てない！
ごめん、Aちゃん、俺にも考える時間ちょうだい。」
と頭をガシガシする。
「うん、私の話でびっくりさせちゃったね、ごめんね。」
私の衝撃的な過去の話をきいて混乱してる相葉君はしばらく考え込んで
「……でも。まあ、とりあえず──」
と右手を出してきた。
──?
「握手。
これからもAちゃんには大切な友人としていてくれたら嬉しい。
って俺、なんか格好つけ過ぎかな？(笑)」
と付け加える。
「──うん、ありがとう。」
差し出された手を握ると
その手は大きくてあたたかかった。
「俺、Aちゃんのこと好きになって良かった。こちらこそありがとう！」
最後ギュッと握ってきた相葉君のその手の強さは
優しいけどどこか強さも感じるもので。
私はきっとずっと忘れないでしょう。
「あ、やべ。もうこんな時間だ。バイト遅れるっ！」
急に我に返った相葉君は慌てて実習室を出て行く。
ドアの辺りで振り向きざまに
「Aちゃん、じゃあまたね！」
と飛び切りの笑顔を見せた相葉君に
「うん、またね！時間取っちゃってごめんね！」というと
相葉君は私に手をふってバタバタと走って行った。
これでよかったのかな？
これでよかったんだよね？
正解なんて分からないけど今の想いは伝えられた。
気持ちを落ち着かせて
帰り支度をして昇降口へ向かう
すると
「──さん、──さん、しっかりしてっ！」
と何かを叫ぶ人の声が聞こえた。
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ゆいねごと(プロフ) - sky57421970さん» コメントありがとうございます！読んで下さってる方の感想をきく機会がなかなかありませんので、とても嬉しいです。更新スピードは遅くて心苦しいですが、より楽しんで頂けるよう頑張ります！ (2019年2月23日 22時) (
レス) id: 2da354f69e (このIDを非表示/違反報告)
sky57421970(プロフ) - 初めまして。更新されるのを楽しみに待ってます。物語の展開が色々と変わるのでわくわくしながら読ませていただいています。これからも応援しています。 (2019年2月23日 6時) (レス) id: 19356e08eb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：やわらかなあたま | 作成日時：2018年9月14日 11時
