死神様のお仕事８【刀剣乱舞】 (ページ10)

今日:4 hit、昨日:84 hit、合計:254,238 hit

仕事~58 ページ10

.

Aは三日月が唐突に割った湯飲みの片付けを手伝おうとして、しかし乱に広間から引っ張り出された。

そこから少し離れた簀子で立ち止まる。彼は慌てたような、戸惑ったような表情でAを振り返った。

乱「A、今日、お誕生日だったの」

『あ、ああ。私が誕生した日だ』

そうだったんだね、と呟くと乱はうつむき、思わず唇を噛んだ。

ちゃんとプレゼントを用意したかった。まさか今日だなんて。

燭台切たちが厨に走っていくのが見えたから、宴はそれ相応なものになるだろうが。

乱はなんとも言えない様子で目の前の少女をちらと見て、目を丸くする。

Aが穏やかに微笑(わら)っていた。

『とても、良い誕生日だ。このような物まで貰えて』

Aは首から下がった守り袋を大事そうに手に取り、目を細める。

心から喜んでくれているのだ。そんな様子が伝わって、乱の心の内にも温かいものが広がった。

乱「そのお守り袋、中にまだ何も入ってないの。だから、好きなものを入れてAだけのお守りにしてね！」

.

『何を入れようか…迷ってしまうな』

乱に背中を押され部屋へと帰されたAは、室内をうろうろとしながら考え込んでいた。

この小さな袋に入るぐらいの、大切なもの。お守りだから、何か縁(えにし)のあるものがいい。

『！』

Aは文机のそばにしゃがみこんだ。その引き出しから料紙の包みを取り出す。

それを丁寧に開いて手のひらに転がして出したのは、小さな瑪瑙(めのう)の欠片だった。

元々は牡丹に模して彫られたもので、三日月がAへ贈った髪飾りについていたものだ。しかし訳あって真っ二つに割れてしまった。

割った本人とAが三日月に謝りにいくと、彼は優しく微笑んで、

「な。付けていて、良かっただろう？」

とだけ言って、ほけほけと笑った。

確かにあの髪留めをつけていなければ、今ごろAの頭のほうが真っ二つになっていたかもしれない。

まさか三日月は、それを見越して…

Aはそんな疑問を抱いたが、聞くことはしなかった。

『もう一度、守ってくれるか…？』

Aは割れた瑪瑙に微笑みかけると、そっと守り袋に入れた。

.