みえないモノをみる。 【文スト】

マフィアと再会＿＿壱 ページ23

「何じゃ、先程の騒ぎは凛か。納得じゃ」



紅葉さんは得心顔で頷いた。納得されるような事をしたのか、過去の私。

……思い当たる節があり過ぎる。完全に黒歴史です本当にありがとう御座いました。



『はは、もう結構変わったと思うんですがね』



私は話題を少しでも逸らすために苦笑してそう云った。だが紅葉さんは持っていた扇子で私をピッと指す。



「戯け、マフィアのビルに来ただけで襲撃と勘違いされるような小娘が何を云うておる」

『すいませんでした』



仰る通りです。

深々と頭を下げると、紅葉さんの雰囲気がふっと軽くなったのを感じた。



「さて……積もる話もある、のじゃが」

『は、い』

「もう行って良いぞ」



え、と私は声を漏らす──何で？

紅葉さんは微笑んだ。私の頭をふわふわと撫でる。



「顔色が酷い、医務室にでも行っておれ」

『……ありがと、御座います』



気づかれていた。やっぱり紅葉さんには敵わない、何と云うかその、色んな意味で。

私は礼をし、部屋を出た。そのまま医務室──なんて行く訳がない、トイレに一直線。



『うっ、おえ……ゲホゲホ！』



胃の中の物を吐き出す。堪らず膝を突いた。

気持ち悪い。


この調子で皆に逢ったら、如何なるんだろうか。




「やあ凛、僕と実験をしに帰って来たのかい？」

『違います』

「そうかそうか！ なら早速丸善ビルへ行こう！』

『止めて下さい』



なんて心配は杞憂に終わった。基さんに憑いていたのは比較的普通の怨霊だった。


──いや怨霊と云うか悪霊と云うか、そもそも憑いてる時点で普通じゃ無いんだけどね。


つうか基さんとの会話が成立しないんだけど。いや違うって云ってんの。えっマジ日本語判る？ あっ判んない？

取り敢えずコレ放っておいたら後が面倒なので『はあ』『へえ』『凄いですね』を繰り返す。基さんは此方の事なんざお構いなしに喋るだけなので、そう云う意味じゃ楽かもしれない。


……でも何で紅葉さんの方の霊はヤバかったんだろう、と考えた瞬間判った。

紅葉さんの部隊に拷問部隊あったわ。



『あ〜はいはいナルホドね、そういう事かよ……』

「ああ矢張り素晴らしきかな科学！ 素晴らしきかな檸檬！！ 此れ程までに素晴らしい物はこの世には無い、そうだろう凛！ そうか君もそう思ってくれるか！ さあ一緒に爆発させに行こう！」

『……』



済みません私何も云ってません。

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