【刀剣乱舞】政府から審神者に人事異動することになった (ページ9)

今日:7 hit、昨日:12 hit、合計:151,010 hit

８話ページ9

突如聞こえた声。
アタシの首の近くで刀はピタリと止まった。

声の主は…

「いち兄…もう、人を殺さないでくれって…！」

厚藤四郎

大方、騒ぎを聞きつけたのだろう。急いで走ってきたのか、肩で息をしている状態。

「厚…」
一期は茫然としては厚の方を見てその名を呼んでいた。

「もう、オレらを守るためにいち兄だけ辛い思いを背負わないでくれよ、オレらだって、その重荷を背負ってやるぜ！？オレ達はそんな頼りないか…？」
ボロボロと涙を流しながらそういう厚は酷く小さく見えた

「ッ…ちが、厚。そんなつもりは！私は…お前達に幸せに過ごしてほしいだけ…なんだ…ッ！」

「……一期。アンタの思いは…幸せに過ごして欲しい、って思いはもちろん弟たちにも届いてる。だけど……ちと、アンタにはその表現が乏しかったみたいさねェ」

焦ったように言う一期にアタシは落ち着いて声をかけた。
厚の言葉に座り込んでしまった一期に、アタシも目線を合わせるためにしゃがんでは顔を覗き込む。
出来るだけ、優しく。それでいて、強く納得させる…心の扉を、こじ開ける…

「数多い藤四郎の兄貴なんだ。信用していいヤツ、警戒するべきヤツの判断を自分の目で見極めるんだ。見極めずになんでもかんでも殺すようになってしまっては、それは自らの手を汚してる事に変わりないンだよ。どれだけ、アンタが弟を守った勲章だ、と言ってもねェ。」

「…ッ！！」

「いいかい？一期。アタシを長い年月かけて見極める事だ。弟たちを守るその精神は素晴らしい。だが、弟たちを辛い状態のままでいさせちゃあ、いけないよ？」

分かったね？、と優しく声をかけながらゆっくり頭を撫でてやると一期はボロボロと涙をこぼし始める。廊下から庭へと降りてきた厚も先ほどより泣いていた。

「い、ちにぃ…ッ！オレ…ッ！オレま、た！みんなと一緒に…一兄と、一緒に遊びてぇよ…ぉッ！」

「厚…ッ……。勿論だ。大丈夫。私が今度こそ守って見せるさ。この身引きちぎれても、お前たちを守り抜くよ…審神者殿、私たちは貴方様を信用しきってはおりませぬ。ですが…。ですが
どうか、

粟田口を、よろしくお願いいたしまする」

泣きついた厚をぎゅぅ、と抱きしめた一期は若干鼻声のままで、でも、強い意志を持った眼でそう言った