37話 ページ38
少し躊躇ったような表情をした後、宗三はいつもの様子で私に刀を手渡してきた。手に伝わる、ずっしりとした刀の重み。
預かったからには、丁寧に扱わないと、ねェ。
アタシ達審神者は、刀剣の刀を預かった時、それは刀剣男士自身の命を預かってるのと同じ事だ。
相手が神だから、とかそんな事じゃあなく。命を預かるならば、何時もよりもっと丁寧に扱うのが人の筋というものだろう。
鞘から抜けば、刀身の状態は主に刃毀れ。血はこびりついていない物の…何処か燻んでいる。刀本来の、光を受けた時の輝きがなかッた。
精神的に痛くなる頭。ふぅ、と小さく溜息を吐いては刀身に指を滑らせた。指先に霊力を集中させて、刀身にソレを流し込む。徐々に光を取り戻していく刀に少し安堵した。
最後の仕上げ、打粉をつけ、数回拭き取ればもう終わり。
鞘に仕舞いなおしては、宗三に手渡す
「ほら、もう終わったさね。お小夜が起きるまで側にいてやりな。その後の事はアンタらに任せる。但し、出て行く時には一度アタシに言ってからにしなよ」
流石に二振り連続で手入れをするのは、霊力が一気に減少した為少し疲労感に襲われた。
上からのし掛かられるような感覚を振り払うように、大きく伸びをする。
無言のままに、小さく頷いた宗三を一瞥しては手入れ部屋の障子戸をからりと開いては廊下に出る。
に、しても……
「博多と日本号はやけに遅い…な、ァッ!?」
「ご主人様!今回のご主人様は素晴らしい人だと聞いたよ…さぁ、ほらっ!僕を痛めつけてくれるかい!?」
「いや、ちょっと。待て、苦しッ……締まってる、締まってる!」
「ちょっと、大丈夫ですか!?」
未だに帰ってくる声が聞こえない日本号達を心配していれば、急に右脇腹に来る衝撃に流石に受け切れずに倒れてしまった。
突進してきたのは亀甲貞宗。……真逆、此処で会うことになるとは思いもしなかった。はぁ、はぁ…と興奮したように息乱す彼は、私の神経を泡立たせるのに適任だった。
部下の近侍にも一人いたが……どうにも、亀甲には何故か馴れない。なんとか引っぺがし、正座をさせた。ニッコリと笑みを浮かべる彼は、随分とボロボロで。
「…おお、主よ。日本号達が帰ってきたぞ。…はて、亀甲か。久しぶりに見受ける。ずっと部屋に篭っておっただろうに。」
静かにそう言いながら入ってきたのは小烏丸。どうやら日本号達が無事帰ってきたらしい。玄関の方からは博多の元気な声が一際大きく響いてきた。
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ガーベラ - はじめまして!課長様、姉貴肌ですね〜。こんなお姉ちゃん欲しかったな〜。続き楽しみにしています!これからも更新頑張ってください! (2020年11月28日 20時) (レス) id: cdc708129e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:病蛟 | 作成日時:2020年7月12日 17時