届かぬ想いを秘めて、貴方に捧ぐ愛の唄。

第１３話:名探偵江戸川乱歩。 ページ13

「やった！私の勝ちだよ敦！」

寮に先に着いたA。
敦に向かって胸を張って見せている。

後ろを向きながら歩いていると
トンっと誰かにぶつかった。

「わ、ごめんなさ...」

「ちょっとぉ？ちゃんと周り見て歩いてよ。
僕が転んでこの服汚れたら、承知しないからね」

ふんっと鼻を鳴らして不機嫌そうにAを見つめる
何やら探偵めかしい服装の男性。

追い付いてきた敦が声を掛ける。

「ぜぇ、はぁ...ぜぇ。
...あ、乱歩さん！
お早う御座います！」

「敦か、お早う。ところでこの少女は
一体誰だ？
この僕にぶつかるなんて失礼にも程がある！」

「え？あぁ、この人はAさんと言って、
僕の孤児院にいたときの...」

「そう言うのは良いから！」

「へぇ〜、君が太宰の言っていた子か。
何だか落ち着きのない子だな」

顎に手を当て、ふむふむとAを
観察するように見る。

「へ？...あ、AAです..」

「僕は江戸川乱歩。このヨコハマ...否！
この世界で一番の名探偵だ！」

バーンｯ！

と効果音がしそうな勢いで名乗りをあげる乱歩。

「乱歩さんは、探偵社で仕事をしてるんだ。
まぁ、ちょっと訳ありなんだけど...」

訳あり。という言葉の意味が判らず、首を傾げるA。

「兎に角！今後、ちゃんと周り見て歩いてよね」

「は、はい！すみませんでした！」

何だか個性的な人たちの集まりなんだなぁ。
と改めて実感するAであった。

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