緑間真太郎は恋にも鈍感 (ページ30)

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29話ページ30

緑間side

修学旅行という教師4年目にしてはじめての経験に、柄にもなく心を躍らせている俺がいた

俺たちが秀徳の生徒だった頃と変わらないこの沖縄旅行に、まさか教師としてもう一度来ることになるとは思ってもいなかった。

先生とは大変なものなのだよ

生徒の管理や安全面の配慮、諸々給料に見合っていないと文句を言いたくなる

「…さて、」

そんなくだらない考えは置いておいて、俺は今、男子部屋の見回りの真っ最中なのだよ

秀徳はそこまで人数が多くない故、まあそこまで大変ではないだろうし、後少しで終わるだろう

コンコン

俺が音を立ててドアをノックすると、奥から「はーい」と声がした

すかさず俺も「見回りなのだよ」と声を出し、生徒の走ってくる音が聞こえてすぐにガチャリとドアが開いた

ドアを開けた生徒の胸元には菅原の文字
コイツはAと同じ部活のやつか。
明日演奏するとか言ってたな。

「何か変わったことはないか？」

俺はそんな関係ないことを考えながらも任務をこなそうと台本通りのセリフを吐いた

すると何やら菅原は少し困った顔で「テレビつかないんですよー、」と頭をかいて
俺は奥から「そうそう！」と聞こえたもう1人の声に吸い込まれるように部屋に入った

「テレビがつかない…だと？」

俺が足を進めると、後ろについてくる菅原

「部屋ん中で見ると先生まじでけーな」なんてくだらないことを話しかけてきて

「先生って高校生の時からそんなでかかったんですか？」と目の前の男子までくだらないことを聞いてきた

俺がテレビのリモコンを押し、テレビが本当につかないことを確認しながら「そうだな」とつぶやくと

この男子生徒2人は「モテた？モテた？」なんて思春期の猿みたいなことをキラキラした目で聞いてきた

リモコンではつかないことを確認した俺はテレビの裏側を見ようとテレビを回して

「バスケしかしてなかったからな、恋愛なんて全くなかったのだよ」とつぶやいた

それを聞いた菅原は「…今、佐藤先生とはどうなんですか！？」と斜め上の質問を俺に投げかけてきて

俺は思わずバッと振り向いて「なぜ佐藤先生？！」と声を上げてしまった

すると俺の質問に対してもう1人の男子が「菅原、高尾のこと好きだから～高尾が緑間先生と仲良さげなの気に食わないんすよ～」とニヤニヤしながら菅原の方を見て
「バカ！！」と慌てる菅原も御構い無しに
「だから佐藤先生と緑間先生応援してんだよな～？」と続けた