命名 ページ35
雅「名前…名前…」
リビングのソファに寝転がりながら、雅紀は考え事をしていた。
和「無い頭をそんなにいっぱい使うと、また熱出しますよ？」
雅「大丈夫だもん…だって、早く考えないと、この子もかわいそうだしさ…。」
翔「直感で良いんじゃないか？パッと思いついたやつ。」
朝からずっと考え込んでいる弟に、半分呆れ顔で言う。
雅「直感？」
自分の隣で、仰向けになっている子犬を見つめる。
子犬は、雑種のようだった。
色は薄茶で、尻尾はフサフサ。
潤「朝からこいつも雅紀から離れてないし、早く決めて欲しいんじゃない？」
智「ね。雅紀の横でずっとゴロゴロしてるもんね。」
雅「…あ！！決めた！」
突然大きな声を出した雅紀を、和也は軽く睨む。
和「何ですか、突然。」
それにはお構い無しに、笑顔で話す。
雅「あのね、決めた！この子の名前。」
嬉しそうに話す雅紀を、幼い子どもを見る親のような雰囲気で智と翔が見つめる。
智「で、何にしたの？」
雅「ごろちゃん！」
散々時間を費やしたわりには、かなり安易な名前に四人は首を傾げる。
翔「…何で？」
雅「え？だって、直感が大事って翔ちゃんが。」
和「そうじゃなくて、名前の由来ですよ。」
雅「ゴロゴロしてるから、ごろちゃん。」
四人は、言葉を失った。
その反応に、あれ？と首を傾げた雅紀は、恐る恐る口を開く。
雅「…あれ…俺、何かダメだった？」
潤「…まー、あのさ。翔兄が言った直感ってのは、そういうのじゃなくて。」
雅「違うの？」
和「違いますよ。」
末の二人に、何が違うかを説明されている雅紀を見て、智はふふっと笑った。
そんな兄を、翔が振り返る。
翔「どうしたの？」
智「いや、雅紀らしいなと思って。」
翔は思い出した。
この兄は、魚の名前に『ポチ』と命名したことを。
そして、桜葉家の癒し系二人は、ネーミングセンスが大分欠けていることを再認識する。
梅雨が明けた翌日。
桜葉家に新しい家族が増えた。
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作成日時：2013年1月31日 23時
