理由９ ページ34
翌日、雅紀は退院し、翔と一緒に帰宅する。
翔「ただいま。」
雅「ただい…ま！？」
玄関で靴を脱いでいる雅紀の下へ、子犬が物凄い勢いで走ってきて、雅紀めがけてジャンプした。
間一髪で受け止めたものの、勢いが良すぎたのか、雅紀の身体は後ろにいた翔にぶつかる。
雅「…っとぉ。あ、翔ちゃん、ごめんね？」
翔「良いって。大丈夫だったか？」
雅「うん。」
翔「…それにしても、元気だなぁ。」
バタバタと足音が聞こえ、和也と潤が姿を見せた。
和「お帰りなさい。」
潤「お帰り。」
子犬が雅紀の顔をぺろぺろと舐めていたが、和也がそれを引き離した。
和「こぉら。とりあえず、翔兄とまーくんを入れなきゃダメでしょう？」
わん！
雅「返事したの？」
わん！
潤「そうなんだよ。こいつ、本当に賢いんだよ。」
和「トイレももう完璧ですし、言うこと聞いてくれますし。」
リビングに移動しながら、話をする４人。
潤「高熱で、雨の中飛び出すような兄とは、大違いだな。」
雅「…そ、それを言われると、あれだけど…で、でも！飼い主に似るんだぞ！！」
和「じゃぁ、この子が賢いのは、今日までですね…何せ、今日まで僕と潤くんで面倒見てたんですから。」
雅「うわ〜ん！翔ちゃ〜ん！！和と潤が、いじめるーっ！！」
翔に泣きつく雅紀を、困ったように笑って受け止めた翔は、和也と潤に視線を向けた。
翔「ほら、いじめるのはそれぐらいにしな。一応、病み上がりなんだから。」
智「そうだよ、それに決めなきゃいけないこともあるでしょう？」
智が５人分のコーヒーを乗せたトレーを持って、キッチンから出てきた。
雅「…決めなきゃいけないこと？」
小首を傾げる雅紀を、四人は微笑みながら見た。
それぞれがテーブルの周りに座ると、智が話しを切り出す。
子犬は、雅紀の隣に座る。
智「そ。この子の名前、決めないとね。」
雅「…へ？」
和「名前無いと、不便ですし。」
雅「…いいの？」
雅紀は、涙目で頷いた。
翔「良いも何も…お前、そのつもりでこっそり世話していたんじゃないのか？体調悪くても、雨の中出かけたのは、それが理由だろ？」
潤「まーが見つけた子犬だからな。まーが退院するまで、名前決めずにいたんだよ。」
雅「…皆、ありがとう。」
わん！
久しぶりに快晴となった、その日。
長かった梅雨がようやく明けた。
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作成日時：2013年1月31日 23時
