夕焼け小焼け【緑さんメイン】 (ページ28)

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理由３ページ28

昼過ぎ。
病院から帰宅すると、翔は雅紀を負ぶって、部屋に連れて行く。
雅紀は久々の兄の背中に、ふとあることを思い出した。

雅「…ふふっ…翔ちゃんの背中、久しぶりだぁ…。」
翔「当たり前だ。…いつの間にか、俺の身長抜かしやがって。」
雅「ね…いつだっけかねぇ…。」

背中越しに聞く、兄の優しい声。
病院で点滴を打たれたからか、暖かくて大きな背中に安心したからなのか、雅紀の口調はどんどん舌足らずになっていく。

雅「それでも…翔ちゃんは、俺の兄ちゃんだもん…。」

少しすると、規則正しい寝息が聞こえてきた。
翔は、静かにベッドにおろし、布団をかける。

安心しきった笑顔で、雅紀は寝ている。
今朝に比べれば、大分熱も下がったようだと、額に手をあてながら、翔は安堵のため息をついた。

翔「大丈夫だ。いつまでも、お前の兄ちゃんだよ。」

翔は静かに部屋を出た。

足音が遠ざかって行くのを確認したかのように、雅紀の目がゆっくりと開く。

店に戻ると、智がカウンターで座っていた。
翔に気が付くと、心配げな顔で振り向く。

智「お帰り。雅紀、どうだった？」
翔「ただの風邪だって。点滴打ってもらったし、今は部屋で寝ているよ。」
智「…そか、良かった～。」

安心した智が微笑んだ。

智「このまま治ってくれるといいね。」

そうだね、と翔が頷いた。

外の豪雨が、全ての音を消している。
その時玄関のドアが閉まる音に、二人は気付くことが出来なかった。