夕焼け小焼け【緑さんメイン】 (ページ15)

今日:12 hit、昨日:28 hit、合計:518,272 hit

双子の喧嘩３ページ15

男五人分の洗濯物は、多い。
取り込んだ分をカゴに入れても、山のようになる。
潤がカゴを持ち上げると、足下は元より前方も見えなくなった。

潤「かず～。これ畳んで。」

リビングに歩を進めながら、ゲームに夢中になっている和也に、背後から声をかける。

和「…ん。」
潤「うん。よろしく。」
雅「潤ちゃ～ん、これでいっかな～。…って！和！！潤！！危ない！！！」

イカを捌き終えた雅紀が手を洗いながら、キッチンのカウンター越しにリビングに目をやる。
…と、ゲームに夢中になっている和也に、洗濯物を抱えた潤が、背後からぶつかりそうになっている。
危ない！と声をかけるが、時既に遅し。

和也に思い切り躓いた潤は前方のテレビに向かって洗濯物をぶちまけ、急に背中に衝撃を受けた和也は、顔が床に着きそうなくらい上半身を倒された。

雅「和！潤！大丈夫？！」

キッチンから慌てて出てきた雅紀は、二人に駆け寄り怪我がないかを見ている。
洗濯物を無惨にかけられたテレビが、ゲームオーバーを知らせる悲し気な音楽を唄う。

雅「大丈夫？どっか痛いとこない？」
和「…まーくん、大丈夫ですよ。ただ…。」
雅「ただ、何？」
和「…そこの愚弟に、一言物申さなきゃ、気がすみません。」

顔を上げた和也は笑っているが、恐ろしい程目が座っていた。

潤「誰が愚弟だよ…。」
和「は？潤以外に誰かいるんですか？」
雅「…あ、ね。ほら、怪我なかったんだし、無事で良かったね。洗濯物、俺もやるからさ。」

二人の嫌な空気を感じた雅紀は、わたわたと間に立つ。

和「本当ですよ。テレビも、潤の膝が思い切り入った僕の首も、奇跡的に無事です。が、赤い帽子のヒゲおじさんが亡くなったんですよ。」
潤「亡くなっても、どうせすぐ生き返るんだろ？」
和「生き返りますけれど、僕の努力と時間は、返りませんよ？」
潤「は？たかだかゲームだろ？」

段々と悪くなる空気に、雅紀は必死になる。

雅「ほら、和也、潤も。もうすぐご飯だし。ね？お兄ちゃん悲しいなぁ～…。」

しかし、そんな兄の言葉は二人の声にかきけされた。