二話 ページ3
「A上等兵ーー!!!!何処に行った!!今すぐ叩っ斬ってやるぅ!」
そう言って叫ぶのは幼少期からの因縁の相手鯉登音之進だ。
「何だよ音之進!お茶ぶっかけたのは悪かったって!!細かいことは気にするなよ!」
軍刀を鞘から抜き、全速力で追いかけてくる鯉登から逃げるA。こんなことが毎日のように行われていて、最終的には月島軍曹に拳骨を食らわされるのオチだ。だが今日は違った。
「また昔みたいに剣術で負かしてやろうか!」
そう叫び鞘から軍刀を抜くA。
「あんなの何年も前だろうが!それに上官なんだぞ!敬語使え!」
Aに追いつき間合いを詰める鯉登。一触即発の雰囲気の中、月島軍曹を呼んでこいという声が周囲から聞こえ始める。
「親の七光り存分に使って手に入れた地位だろ?家柄が良くて大変羨ましいものでモスよ音坊ちゃん」
鯉登のこめかみに青筋が浮かんだ。
「キエーーーー!!!!」
猿叫をあげ斬りかかってくる鯉登の猛攻を躱し鯉登の喉元に軍刀を突きつけるA。
「そこまでにしろ鯉登少尉、沢木A上等兵」
聞き慣れた声を耳にし、二人は同時にそちらを向いた。
「つつつつつ、鶴見中尉どの!!これは喧嘩していたわけではなく………鍛錬です!!」
「ksかsjっどぅあkzj」
鯉登が訳のわからない早口の薩摩弁で弁解する。
「鯉登に関しては何を言っているのかわからん。仲睦まじいのはいいが壊した障子はどうするつもりだ?A上等兵?」
部屋を飛び出した際に壊した障子を今更思い出した。鼻と鼻がくっつきそうなほどの距離まで近づかれ麗しい中尉殿の顔が目の前にある。果実を煮詰めたような甘い良い香りが漂ってきた。
「べ、弁償させていただきます!!!」
「よろしい、後で二人とも私の部屋に来なさい。」
鶴見中尉殿が離れていってしまう……こんなことならもっと良い匂いを嗅いでおくべきだったな。
すっかり放置されていた鯉登がぐにゃりと後ろに倒れた。
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にわとり軍団(プロフ) - これからも、無理せず頑張ってください (2021年7月7日 20時) (レス) id: f3a836e824 (このIDを非表示/違反報告)
ババロア(プロフ) - 拙い文章ですが読んでいただきありがとうございます。コメント励みになります。 (2021年7月7日 16時) (レス) id: 4b791cffdb (このIDを非表示/違反報告)
にわとり軍団(プロフ) - 普通に面白いです (2021年7月6日 20時) (レス) id: f3a836e824 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:月崎和乃 | 作成日時:2021年5月4日 15時