唯一の常識人だと思ってた奴が実はヤバいやつで女だった。 (ページ13)

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十一話ページ13

いらないと言ったのだが部屋から出ると三島が待ち伏せていた。
「沢木上等兵、そんな嫌な顔しないでくださいよ」

「代わりの者はいらないと言ったはずだが？」

「どこにいるのかもわかっていないくせに俺無しでどうやって尾形上等兵の所に行くんですか？」

これだ。この三島の歯に衣着せぬ物言いが少し、いや大分苦手だ。それでいて正論をついているため言い返せない。

「お前のかわりは．．．」

「いません。尾形上等兵の居場所を知っていてここに戻ってきているのは俺だけですよ。」

もう三島でいい。本来の目的は造反した尾形の脳天をぶち抜いてやることなんだ。こんな所で時間を食っている暇はない。

「谷垣じゃなくて悪かったですね。そんなに谷垣がお気に入りでしたか？」

走りながらも三島は話しかけてくる。

「谷垣といると心が浄化される。谷垣は心がきれいだから」

「沢木上等兵の心が汚いだけですよ」

またにっこりと笑って悪口を言う。私は上官だぞ？

「否定はしないよ。お前、顔がいいからって何でも許されるわけじゃないぞ？」

「沢木上等兵殿には負けますよ。女にも男にも人気がありますからね！昨日も上官に夜の相手に誘われていましたよね？」

二人の間に険悪な雰囲気が流れる。今の会話からわかる通り私と三島の相性は最悪だ。
尾形や宇佐美だったらきっと今までに何十発も殴っている。
私は無駄な暴力というものがあまり好きではなくよほどのことがない限り殴ったり蹴りつけたりしない。三島もそれが分かっているのだろう。

「ここが尾形上等兵がいる山です。」

「場所は？」

「ここのどこかですよ。移動しているとは思いますがこの山からは出ていません。」

「谷垣は？」

「え？」

「谷垣はここにいるのか？」

「可能性はあると思いますよ」

私と三島の間にもう会話はなく二人とも真剣な表情で山に足を踏み入れた。

まってろ尾形！！