僕の神様 (ページ5)

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肆話ページ5

「何者かって？私はただの人間だよ。それに馬鹿正直に美しいなんて久しぶりに言われたな」

鶴見さんはひとしきり笑い転げると笑いすぎて涙の滲んだ目で言った。

「神様ねえ…宗教でも作ろうか？そうしたら君が信者第一号だ」

まるで秘密を共有するかのように顔を近づけて小さな声でそう囁かれた私はいくら世間で天才だなんだと言われようとも鶴見さんの前ではただ幼いだけの子供だ。

カーッと顔が赤くなっていくのが自分でもわかる。

「なんてね、本気にしないでくれよ？君の父上に息子を誑かされたと怒られてしまう。」

最初の印象とは打って変わって子供っぽい表情をする鶴見さんに目が離せなくなった。
いま考えれば私はあの日恋に似たような感情を鶴見さんに抱いたのかもしれない

「さあ団子を食べ終わったら帰ろうか。そろそろ君の父上も待ちくたびれている頃だろう」

それから家に帰ると父と鶴見さんは二人でどこかに出かけて行ってしまった。

私は綺麗なガラス玉のような飴を一つ口の中に放り込む。

家では甘いもの、特に菓子なんかは禁止されていて食べられなかった。
しかし、禁止されればされるほど食べてみたくなり学校の帰りに一度だけ誰にも内緒で菓子を買ったことがある。

口の中に広がる甘い味は未知のものでそれ以来私は禁止されているにもかかわらず菓子の虜になってしまった。

その時に買った飴は大事に大事に食べていて特にいいことがあった日なんかに一つずつ食べる。

鶴見さんと街に出かけた時にだけ食べられる美味しい団子。

今でもあの店は変わらずあるのだろうか