けが ページ19
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『あっ、い"っ、いったあ』
ガシャーン!という音とともに床に皿の破片が広がった。やっちゃったよ…。手が少し切れてしまったしなるせのお気に入りのコップだし最悪だ。
なるせはたしか今配信中だ。思わず声が出てしまったあといそいで口を手で覆う。気づかれてない…かな?
「なんかすげー音したけど、は?A!?」
『びっ、くりした』
「いやストップ!マジでなにやってんの!」
お皿を片付けようとしゃがんで触れようとした瞬間作業部屋のドアがガチャっとあきなるせが顔を覗く。思ったよりもひどい状況だったからか状況を把握しきれていないようだ。しかし光の速さで私のもとに来て手を掴んだ。
「まって怪我してんじゃん」
『大丈夫だよそれより配信は?』
「大丈夫じゃないだろ」
なるせは怒ったようにそう言って「ちょっと待ってて」と言って急いで絆創膏を取ってきた。いそいで水洗いをしてサッと私の手に絆創膏をつける。私がごめんねと謝るとなるせはまた怒った顔をした。
「あのさあ怒るよ俺」
『…なるせのコップ割ったの怒ってる?』
「ガチでばかなの?俺はAの心配してんの!マジで気をつけて!今は優しさとかいらないの!俺彼氏なんだから配信とか気にせず頼って」
なるせはそう私の両手を掴んでそう言った。
本気で怒らせた、つまり本気で心配させた。何も言うことができず下を向くとなるせは少しため息をついた。ちらっと顔を見ると予想外に優しい顔をしていて、パチっと目が合うと「反省してるならよろしい」と私の頭を撫でた。
『ありがとうなるせ』
私が小さな声でそう言うとなるせは一度頭を撫でていた手を止めて笑った。私が思わずなるせに抱きつくと「うわっ」と声を出して受け止めた。
『今好きだーって気持ちになった』
「…いやマジでかわいいんだけど」
私がギューと抱きしめるとなるせも返してくれた。ふと顔を上げると目があってそれを合図かのように私が目を閉じると唇が合わさった。いつもよりも心なしか熱いキスに吐息が漏れるとなるせは一度離れて眉間にシワを寄せた。
「はあ、ガチでかわいい、」
『ちょ、なるせっんぅ』
なるせはそう独り言のように言うと先程よりも深いキスをした。
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『ちょっとなるせお皿片付けないと』
「この状態でお預けすんの?片付けは後でね」
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作者名:みるる | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/list/Nagisa-Aonami/?w=1
作成日時:2021年10月17日 0時