転がる ページ10
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「リリー、あのさ昨日俺バイトしてたらさ」
「おん」
「誰来たと思う？」
「おん」
「麒麟の川島さんやってん、僕も芸人目指してるんですー言うたら頑張ってなっていわれて」
「おん」
「話いつになく聞かんなあオイ」
なんや、さっきの。
Aちゃん。破壊力ありすぎやろ。
「…バレてた？」
って、ぐるぐる脳みそ掻き回して出た返事。
Aちゃんは
「まあねー、私みたいな可愛い先輩いたらみんな好きになってまうもんね」
と、今度は師匠クラスの姉さん芸人みたいな返しをしてきて
さっきの「もー好きやないの？」なんてな甘い言葉もひっくるめてAちゃんの冗談ということがわかった。
くそ、悔しい。なんか。
こんな手のひらでコロコロと。
「悔しいな」
「そうやな〜俺も早く頑張ってなって言える立場になりたいわ」
「え？」
授業が終わり帰る支度をしていると、教室内のホワイトボードに『現役生ネタライブ』と書かれたチラシが貼られている。
参加希望は15日までに申請と赤字で書かれていた。
15日？もうあと1週間しかないやん。
どうしよ、振り出しに戻った俺は。今回はやめとく？来月もあるしなあ。
でもそれでええんやろか。
「あー！リリーくん！丁度ええとこに！」
教室にはもう俺しか居らんくて、入ってきたAちゃんが嬉しそうに声を掛けた。
またコロコロされんように気をつけな。
「どうしたん大荷物やな」
「明日の資料ホチキスでとめるの手伝って」
「雑用？丁度ええってか俺が」
どさっと大量のプリントを机に置くと
Aちゃんは椅子をガタガタと移動させて机を隔てて向かい合わせに置いた。
「まあまあ、お話しながらやろ？」
Aちゃん、本当は俺が断れんのわかってるんと違う？
椅子に俺が座るとぱあっと顔を明るくするから、くそかわええなあと、やはりコロコロと転がっている俺。
「チラシ見てたけど出るん？」
「ライブやろ、相手が居らん」
「斎藤は出るって申請してたよ」
おい、斎藤。
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作者名：ぴぴ | 作成日時：2023年3月13日 14時
