遊ぶ ページ22
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Aちゃんはあの日以来
養成所で会ってもよそよそしくなった。
俺も元々吸わんから喫煙所に行く事はなくなると
気付けばAちゃんはもう養成所に来なくなっていた。
「Aさん最近見ないなあ」
もうすぐM-1の予選が始まる。
ネタをファミレスで考えながら、少し行き詰まった時に口にしたモリシの言葉。
「そういや見ないな」
白々しく言う俺。
知っとるけど、もう、大阪におらん事。
「リリー狙ってたんちゃうの？」
「あー、新しい子見つけな」
「エグう、やめてなクラスの子おとかは」
ほんまに女の子好きなんやな、と呆れながらモリシはタバコに火をつけた。
女の子は好きなのは変わらない。
でもそれは女の子を落とす感覚が自分の自信になるという錯覚を起こして安心できるから。
…Aちゃんに対する気持ちはそんなんちゃうかったけど。
Aちゃんと関わることがなくなってからはバイト先の先輩やら飲み屋のお姉さんやら、モリシの言うクラスの子おとも、手当たり次第といったように遊んだ。
みんなかっこいいとも言うし、また会いたいとも言う。
けど
Aちゃんの「面白かった」の言葉に勝るものはなかった。
喧嘩のような気まずい別れでよかった。
会いたいけど会いたくないような、Aちゃんを思い出しても寂しいとは思わない。
…
「あかんかったな」
「他のクラスのやつ二回戦行けたらしい」
養成所の評価はM-1の結果でも左右される。
俺らは一回戦落ち。
やっぱりテレビも東京も夢のまた夢や。
「秋のライブ頑張ろうなモリシ」
「お、おう、そやな！次や次」
その夢が叶うまでは、コイツと頑張らな。
他と比べてもしゃあないし
そんな時間あったらもっともっと面白くならな。
気づけば秋のライブも終わり、俺らが落ちたM-1の決勝戦も終わり、バイトとネタ作りに明け暮れていたらあっという間に正月。
岡山の実家で迎える正月は、養成所での焦りを忘れられてよかった。
コタツでぼんやりお笑い番組を観ていると
毎年恒例でない番組が目に止まる。
正月らしいベテラン芸人でなく若手が主軸の番組。
エンディングまでなんとなく観ていた時
ざーっと製作陣のスクロールが出ると構成の所に
AAと表示されていた。
「あっ？」
思わず、声を上げてしまった。
Aちゃんや、Aちゃんが作ったんや
今の番組。
すごいなほんま
ちゃんとAちゃんは夢を叶えていって。
俺も、俺も、絶対そこまでいかな。
すぐに俺は
『明日、ネタ合わせよ』とモリシに連絡した。
モリシからは『4日に帰ってくるんちゃうん？』『モチ食い過ぎて太ったかも』と返事が来てた。
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作者名：ぴぴ | 作成日時：2023年3月13日 14時
