好きになる ページ11
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パチン、パチンとホチキスでとめる音
友達のようなトーンの会話。
Aちゃんは距離を詰めるのが上手いな。
俺以外の同期とも最近になって談笑してるの見かけるし
喫煙所ではAちゃんの周りにタバコ吸う奴が固まってて話せへん時あるし。
「リリーくんの漫才、こないだ見れへんかったから早く見たいけど」
「…覚えてたん？」
「仕事急に入って、必死に終わらせようとしたけどダメやった」
こんな小さな事で喜ぶ俺。
他の同期より特別なんやないかって、たまに錯覚する。
考え様によっては
俺が漫才をするのを初めて楽しみにしてくれていた人がAちゃんって事でもあるわけで。
「Aちゃんの事笑わせたいな」
本音がポロッと口から出た。
「…厳しいよ？私」
「それでも」
Aちゃんの笑う顔、好きやから。
「リリーくんって面白いね」
「言われんのにな、相方おらんねん」
「私がなってあげれたらよかったね」
Aちゃんはホチキスを持つ手元を伏し目がちに見ながら笑って言う。
Aちゃんが相方なら、俺はもう好きすぎてきっと「面白くない」やつになるんやろうなあと
前に言われた事を思い出していた。
「リリーくんと組みたい人いるよきっと」
「まーた慰めて、好きになるけどええの？」
そう、また冗談のつもりで言った。
「好きになってええよ」
Aちゃんの声と
パチン、とホチキスの音が静かに教室に響いた。
「…ほんまに好きになるけど？」
「私が好きになるかは別やけど」
相当な場数を踏んでるな
このAちゃんという女は。
こんなにいけずな台詞言うのに、こんなに優しく笑うんやもん。
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作者名：ぴぴ | 作成日時：2023年3月13日 14時
