ラブリー

お誘い ページ16

１６





東京を拠点にというのは
本当に日々何も変わらず。

拠点が変わる予定である来月も、

大阪の劇場にしっかり目に出演予定があったし
関西の準レギュラーの番組の収録も入っていた。

東京の仕事もぽつぽつあるくらい。


ただひとつだけ
明確な変化があるとしたら

これから私の住む所。



「高いなあー」

と、呟きながらスマホでスクロールするのは関東圏の賃貸サイト。

いま住んでるところもそろそろ契約更新の時期で
斎藤も東京に住むと言うし、試しに検索したのだった。

出てくる物件情報は全部今の所より
一、二万上乗せされてるような家賃ばかり。


「何見てん」


そう声を掛けてくるのは盛山さん。


「あ、お疲れ様です。
盛山さん、東京住みます？」

「あー、俺もう契約したで。
まだ足さえ踏み入れてへんけど」


まあ、盛山さんぐらいになるとそんなもんか。
リリーさんは確かもう去年くらいに住み始めたって言ってたな。

2人は大阪と東京の二拠点で生活するらしい。

まだまだ食べていくのがやっとの私は
住むとしたらどっちか。




「東京なら実家帰ったらええやん」


そう言う盛山さん。
私は苦虫を噛み潰したような表情。

「…あ、そーか、
Aちゃん、芸人反対されてたのにこっち来てるんやったっけ」


そうなのだ
私は親に反対されてでも芸人になりたくて
東京から大阪に来た。
女芸人だとよくある話。


「まあ、女の子の親やから心配なんやろ」

「そーかも、いまの私見たら卒倒しちゃいます。」

「さっきの漫才、斎藤にぶっ叩かれてたけど」

「ああもうきっと吉本にクレームきちゃいます」


ひゃひゃひゃ、と声を上げて笑う盛山さん。


「でも、多分キツいで東京に家ないの」

「えー、本当ですか？」

「ほんまほんま、収録深夜なんてザラやし、ホテルもしょぼいし、荷物多なるし」


さすがは先輩。
最近テレビで見ない日ないもんな〜。

スマホの物件を睨んでいたら


「…近い日で東京行く事ある？」


と盛山さん。

手を合わせて指をいじいじと手持ち無沙汰にして聞いてくる。

「直近だと、明後日東京本社行きます」

「お、ほんま？
俺ん家見てみる？相場とかわからんやろ」

「え！見たい見たい！！」


盛山さんの新居なんて、どんなとこなんだろ。
普通に好奇心で即答する。


「ほんなら用事終わったら連絡して
多分その日ラヴィットとその後ロケだけやから」

「わーい！ありがとうございます」

「いえいえ」


本当に面倒見いい盛山さん。

横に座る反対側の見えない方の手で
ガッツポーズしてるなんて
私は知らない話。




.

エロエロ→←涙の…

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す