3,一番分かっているのに ページ5
損害賠償請求は、特にされなかった。どうやらAに恐怖心を抱いてしまったらしい。眼鏡の男はその後しばらく、震えて声も出せない状況だったという。今まであんなにがむしゃらにかかってこられた経験がないのだろう。
それを伝えると、当の本人は「お坊ちゃんかよ」と吐き捨てていたが、やらかしている事には気がつかない。声も出せない程の恐怖与えてるんだぞ。
しかし、あいつが組長だとはとても思えないのだ。どっちかと言えば、補佐の様な立ち位置だったように思える。請求されなかったのは、これが初めて…というわけではないのだが、どうも気になる。
「じゃあ、組長が仕掛けて来るんすかね？知りませんけど」
「そういう脳は働くんだな」
と嫌味ったらしく言ってみるも、本人は小首を傾げるだけだ。気づいていないらしい。まぁ、気づかれて怒られた所で、対処するのは大変なのだが。
「来たらぶっとばせばいいだけでしょう。それなら得意なんで」
意気揚々と宣言するが、ここが壊されちゃ敵わない。暴れるなら市街地へ放り出さなければ。などと針が考えていると、足音が一つ、二人に近づいて来た。
「…何をしている」
「廻さんじゃないっすかー。任務？」
二人の視界に映ったのは、黒いマスクをつけた治崎廻であった。彼もまた、死穢八斎戒會の一員だ。廻は怪訝な面持ちで二人を見てから、ため息をついた。正確に言えば、Aの方を向いてだ。
「違う。取引の頼み込みだ。今回の取引は、重要な、大切な、取引だったんだ。今更、はいそうですかで終わらせられる取引じゃなかった。馬鹿にされて腹が立つ気持ちは分かるが、力任せにしても組の為にはならない」
重要である、大切であるということを伝える為に、強調を繰り返して説明を終える。幾度となく壊してきた取引ではあるが、今回は最もやらかしたものだったらしい。
「…そーですね」
見て分かる様に肩を下げる。陰気な見た目にプラスされて、更にどよんとしている。落ち込んでいるのだろう。
「はぁ…。お前の性格は今に始まったことじゃない。親父の期待を裏切らないようにしろよ」
廻も何だかんだでAに甘い所がある。組を思う気持ちが理解出来るのだろう。
「…はい」
自分が駄目な事は、自分が一番分かっている。それのせいで、組に迷惑がかかっていることも理解している。
Aは、悔しさのあまり、唇を噛み締めた。
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マリイ - 治崎廻大好き (2022年3月20日 16時) (携帯から) (
レス) id: 82a6cba0ff (このIDを非表示/違反報告)
いずでく - うわーーーーん！ (2019年1月8日 16時) (レス) id: c864c21ee8 (このIDを非表示/違反報告)
ねじる - 泣きました。。。良いお話です。でもこれ見ると、死穢八斎會の人達ってホントにヴィランなのかな？って思えてくるwww良いことですけどね！ (2018年12月9日 15時) (レス) id: b17a466711 (このIDを非表示/違反報告)
百聞(プロフ) - ゆうなさん» 泣いていただけるとは思いませんでした。ありがとうございます。感動していただけたことが何よりも嬉しいです。 (2018年4月29日 13時) (レス) id: c88b707ff9 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうな(プロフ) - めっちゃ泣いてます………感動しました…素敵なお話ありがとうございました…！！！完結おめでとうごさまいます。更新お疲れ様です (2018年4月29日 13時) (レス) id: b1153871a1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：百聞 | 作成日時：2018年3月4日 21時
