31,ハッピーエンド ページ36
「とかいう話もあったっけなぁ」
「…は？」
Aが突然呟いた言葉に、苛立ちを隠せない長身の男。その男の手には銃が握られており、銃口は、Aの額についていた。「いや、少し昔話をね？」と白々しく口角を上げ、さらなる怒りを覚えさせる。余裕そうな言動とは裏腹に、Aは絶体絶命であった。縛られた体躯に、突きつけられた銃口。周りには何十名の男達。A自身も、逃げられないことは分かっていた。
「まぁいい。答えろ道明A」
「ん？」
この数年で事は大きく変わった。死穢八斎會の組長の意識不明、交代。衰退していた組だったが、もう無くなってしまった。皮肉にも、Aだけが捕まっていなかったのだが、この状況なら捕まっておいた方がマシだったか。
***
私は、廻さん達についていった。親父が廻さんに意識不明にされた時。確かに抗議はしたし、初めて廻さんに怒鳴り散らした。それでも親父の意識は戻らないし、お孫さんも実験に使われる。私如きの抵抗なんて、虫程度のものだった。勿論抜ける事も考えたが、親父の側から離れたくは無かった。
私は粉々に砕かれたペストマスクに視線を移す。
あれは、私を否定したものだ。廻さんからの初めての否定。それまで仲間だった私達がバラバラになった印だ。「同じ空気を吸いたくない」なんて、言われたら結構心に来るんだぜ？
それよりも何よりも、私は変わった事が悲しかった。だけどずっと廻さんの…オーバーホールの隣についていた。マスクをせずに会話をしていた私達が隣にずっといた。
オーバーホールにとって、私が使える物だったとしたなら……それは、とても喜ばしい。
私は少し多くのものを望みすぎた。幸せになりすぎた。
だが、幸せにしてくれた人達が、私の幸せを奪おうともプラマイゼロなのだ。
だから私は幸せな時を思い出した。
これは、私の幸せだった頃の記憶を綴ったお話しだったってことだ。
しかしそれももう終わりだろう。
「俺達の所へ来い。そうすれば、生きさせてやる」
私を勧誘するとは、随分と自信がある男だ。だがお生憎。私は、てめぇに使われたくはねぇ。
「どうだ。ヤクザなんかやめて、俺達の元に_____」
「嫌だね」
私はぐいっと顔を開けて男を睨む。しかし、口だけは笑顔を浮かべて。
「私はずっと、ヤクザの道明だ」
「そうか…残念だよ」
男の指が引き金を引く。
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マリイ - 治崎廻大好き (2022年3月20日 16時) (携帯から) (
レス) id: 82a6cba0ff (このIDを非表示/違反報告)
いずでく - うわーーーーん！ (2019年1月8日 16時) (レス) id: c864c21ee8 (このIDを非表示/違反報告)
ねじる - 泣きました。。。良いお話です。でもこれ見ると、死穢八斎會の人達ってホントにヴィランなのかな？って思えてくるwww良いことですけどね！ (2018年12月9日 15時) (レス) id: b17a466711 (このIDを非表示/違反報告)
百聞(プロフ) - ゆうなさん» 泣いていただけるとは思いませんでした。ありがとうございます。感動していただけたことが何よりも嬉しいです。 (2018年4月29日 13時) (レス) id: c88b707ff9 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうな(プロフ) - めっちゃ泣いてます………感動しました…素敵なお話ありがとうございました…！！！完結おめでとうごさまいます。更新お疲れ様です (2018年4月29日 13時) (レス) id: b1153871a1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：百聞 | 作成日時：2018年3月4日 21時
