それでも明日は ＊3＊

16話 届かない ＊黄 ページ45

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手首は確実に折れてる。
いや、もしかしたら腕ごと持ってかれたかも。
心臓が左手首にあるみたいに脈打つ。

撮影のライトがスタッフさんに倒れかかったのを
何も考えずに左手で跳ね除けたのが間違いだ。
蹴り飛ばせばよかったか、なんて考える。

まあ、パフォーマンスは片手でもできる。
バク転もギリギリ回れるな、なんて場違いさ。
自分は根っからのSnowManだなって笑った。


ここにいて、と言うスタッフさんに
家が心配だからと押し切って歩き始めた。
大体20キロもあるから、頑張ったとて夜になる。
それでも、帰らなきゃと言う気持ちだけが足を動かす。

ぶっちゃけで言うなら、もうあちこち痛い。
服は脱いでたし、裸足だったし、
とりあえずラックにかかってた服を取ったものの
今は冬で、それだけじゃ凌げそうもない。
靴だって、撮影用の革靴で、裸足で履いてしまった。



『もしもし、阿部亮平です。
こっちには向井康二と目黒蓮といます。
3人とも怪我はなし、とりあえず家に帰ります。
多分夜になると思います。
また、連絡できる人はください。

また、後で。必ず会いましょう。
無理せず、無茶せず、元気にね、待ってるから』



メンバーが、生きてる。

それだけが、希望だった。
10年ほど前の震災では連絡手段がほとんどなくて
全然メンバーと連絡が繋がらずに
不安で不安でたまらなかったのを思い出す。

会えた翔太は全力で抱きしめた。
多分骨の1本や2本折れててもおかしくないくらいに。

でも、今は希望がある。
生きてる、家に向かえば会える。
結構な道のりだけど、それだけが原動力になった。


まだ佐久間とラウールは繋がらない。
何度か伝言板にかけてみるもメッセージは無い。



『＿＿区では、3件大規模な火災が確認されています。
＿＿、＿＿、＿＿、付近の住民の避難が促されるも
交通状況により、時間がかかっているようです。
ドライバーの皆さん、車は端に寄せ、
ロックはかけず、避難するようにしてください。
緊急車両用に道路の真ん中は空け、端に寄せて
ロックはかけず、避難するようにしてください』



競馬をよく聞くと言うスタッフさんにラジオを借りた。
自分の住む地域、みんなの撮影地域が
どうか聞こえてこないようにと祈りながら聞く。



『引き続き、大きな揺れに警戒してください。
建物の落下物には十分に注意して避難してください』



この東京で建物から離れるなんて到底無理だ。
ほぼほぼ運だろ、と1人呟いた。

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