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「阿部ちゃん、」
「〜〜〜〜っ、なに、これっ、なんでっ…!」
「阿部は生きてた?死んでた?」
「死んでたよ!!俺も、佐久間も!
なんでっ…なんで誰もいないの!
ラウールが独りなの!?
あんな顔させるなんてっ、そんなのっ、最低だ!」
「最低だよ」
喚く俺に、翔太は静かにそう言った。
「最低だよ、んなこと分かってる。
多分俺らはみんなそれぞれ違う場面を見てた。
そんで、みんな、死んでただろうな」
舘様も佐久間も静かにうなずく。
「何回か繰り返した物語のほんの断片を、
俺たちは、見てたんだと思う。
そのどれにも、誰もいなくて、本人は死んでて。
そのどれにも、ラウールはいつも1人」
何回か、繰り返した、物語。
「馬鹿げてるって思うよ、
そんなファンタジーなことあってたまるかって。
でも現実にあるんだよ。
俺らがずっと信じない中、あいつは1人で
何回も繰り返して、何回もああなってたんだ」
「ラウールは、何回も、引き止めてた。
行っちゃだめ、入っちゃだめって、何回も。
俺らは、馬鹿だなって、笑って…」
「ラウールが1人で抱え込んでたのも、
こんな世界になってることも知らないで、
俺たちはドッキリだって思って、
ずっとあいつに守られてたんだよ」
この洋館に入った時、
分かれようって言ったのはラウールだった。
仲良し同士で行こうよって、チーム分けして、
場所まで決めて、俺らはなんの違和感もなく従った。
階段の近くから行こうかと、ラウールの独り言が
インプットされたからか、
俺達も自然に階段の傍のあの部屋から入った。
化け物に鉢合わせしたけど、逃げきれて。
その後は、ドッキリだよって笑われて。
___ そういえばずっと、
ラウールの後ろ姿ばっかり見ていた気がする。
「この時計が、なんだかさっぱりわかんねぇけど」
「でも、これが絶対手がかりなはず!!」
「守られてるばっかじゃ、性にあわないしね」
「繰り返しちゃ、いけない」
佐久間と舘様が散らばった時計の破片を拾う。
そしてそれをクローゼットに隠した。
「ラウールも多分この時計を知らないと思う」
「うん、俺も思う。
知ってたら多分俺があそこを探すのを止めたと思うし」
「とりあえず、黙っとくか。
まだ俺らの記憶も全然だし、下手に動けないし」
「うん、ただ、守られてばっかにはもうならない」
当たり前!と佐久間が笑った。
佐久間の笑顔はいつも背中を押してくれる。
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みさ(プロフ) - ぴぴろんさん» コメントありがとうございます!50ページほどあるのを一気なんて…!嬉しいです!他の作品まで!?本当にありがとうございます!ゆっくりにはなってしまいますが、頑張りますのでこれからもどうぞよろしくお願いします! (11月16日 9時) (レス) id: 1fb25e0756 (このIDを非表示/違反報告)
ぴぴろん - すごく引き込まれるお話で、一気に最後まで読んじゃいました!!他の作品も全て読ませていただきました!これからも楽しみにしています!!! (11月15日 21時) (レス) @page50 id: f81a8e6519 (このIDを非表示/違反報告)
みさ(プロフ) - ちいさん» コメントありがとうございます!なかなか更新が滞っていて進まないお話ではあるのですが、楽しみにしていると言ってくださって嬉しいです!これからも頑張りますので、ゆっくりのんびりと待っていただけると嬉しいです!これからもぜひよろしくお願いします! (11月14日 2時) (レス) @page7 id: 1fb25e0756 (このIDを非表示/違反報告)
ちい(プロフ) - 初めまして。ラウールくんのこういうお話って中々ないので、書いてくださって嬉しいです。お話の内容も凄く引き込まれました!これからも楽しみにしています^^ (11月13日 20時) (レス) @page50 id: 55bf2eb683 (このIDを非表示/違反報告)
みさ(プロフ) - あいはねさん» コメントありがとうございます!そう言っていただけて嬉しいし、幸せの限りです。同時並行なんか無茶か…とも思いましたが、どれも大切な白さんなので、少しづつ大切に書いていきます。長らくお待たせしていますが、これからもよろしくお願いします。 (2022年9月24日 19時) (レス) id: 1fb25e0756 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みさ | 作成日時:2022年8月10日 1時