デラシネ〔9〕【終わりのセラフ×ワートリ】 (ページ2)

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第336話ページ2

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戦争なんて、エゴとエゴ、正義と正義の衝突だ。どちらにとっても己の主張が正しくて、相手の主張は間違っている。この腐った世界でも、それだけは「向こう」と何も変わらない。

大きな流れを個人がどうにかしようとするのは無意味だし、何も変えられない。どんなに権威権力があったって、結局最後に勝つのは数の力だ。例外なくそれは私にも当てはまる。肩書も《黒鬼》(ちから)もただのラベルで、私は無力な人間に過ぎない。

けれど、何も変えることができない、大きな流れに流されるしかないからこそ、私は、私達は、家族を生きる意味としてこの世界を生き抜いてきた。たったひとつの希望を、意味を他者に託して、自分も生きるのだからお前も生きろとエゴを押し付けてきた。

戦争という利得の奪い合いの中で生き抜くためには、時として非情な、合理的な決断を迫られる。しかしそれらは往々にして、これまで己が貫いてきた生き方を否定する。損得勘定と人生の価値観がぶつかり合って、おかしくなりそうだった。

現実逃避のように、今ここにいない彼ら(・・)の顔が思い浮かぶ。

自分の人生のために利用したことを、あのひとは笑って赦した。

“言っただろ、百夜。あん時にさ。
俺達はいくらでも利用されてやるって”

“だから、おまえはちゃんと生きろ”

ちゃんと生きろ。ちゃんと生きるって何？
あのひとのことだから、きっと深い意味なんてない。言葉通り、額面通りの意味だ。
公平を、太刀川さんを、風間隊を利用した。彼らはそれを甘んじて受け入れた。赦された私が、すべきことは？

「‥‥グレンを、探します」

「‥‥Aちゃん」

「きっと私には止められない。でも、‥‥止められなくても、ひとりにはしません」

家族を、仲間を大事にしろ。
グレンからの教えを、体当たりで私と向き合ってくれた仲間の思いを、今この場で捨ててはいけない。

もしグレンに突っぱねられたら、言ってやる。

「アンタが私を拾ったんでしょ」って。

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