性悪王女に転生したらなぜか逆ハー状態になったんだが！？

＊19話　契約＊ ページ19

「お待たせしました。アズール・アーシェングロットです」



にこやかな顔をしたアズールが恭しく頭を下げる。



なんか…なんだろう、さっきまで隣にフロイドが座っていたからだろうか、ホストクラブの支配人みたいだ。



「私はA・キングスカラーですわ。
…それで、何の御用ですの？」



「提案がございまして」



「提案…？」



彼は私の前に来ると、目線を合わせるように座る。顔がより近くなり、アズールの端正な顔がよく見える。



「ここで働いてみませんか？」



「え…？」



まさかの提案に、頭が追いつかない。



ここで…モストロ・ラウンジで、私が働く…。



「わ、私は王女ですわ」



「えぇ、もちろん分かっていますよ。ですが、貴方は愛する人のためなら身分を捨てる覚悟があるとか」



「…そうですわ。よくご存知で」



なんで知ってるの。まさか、昨日の話聞かれてたの…！？



「王女である貴方がいきなり身分を捨てて生きていくことは難しい。ここで働きながら、身分を捨てて生きていくとはどういうことか、考えてみてはいかがですか？」



彼の笑顔からは腹の底が見えない。私を雇用して…彼には何のメリットがあるのだろうか。



「アズール…先輩。あなたからの申し出は嬉しいですわ。ですが、私を雇ってあなたにどのようなメリットがあるのです？」



「Aさんはこの学園唯一の女性です。人気もあるようですし、集客力抜群でしょう」



賄いつきですし、どうです？



アズールはそう付け加える。眼鏡の奥の瞳が妖しく光った。



…人気があるかはさておき、そういうことなら乗らない手はない。



あぁ、モストロ・ラウンジで働けるなんて光栄だ…！



「分かりました。お世話になりますわ」



契約内容を確認し、契約書にサインする。なかなかにお給料も良い。身分を捨てた時のために貯金しておこう。



「アルバイトについてはまた追って説明します。連絡先を教えていただけますか？」



「えぇ」



アズール先輩と連絡先を交換する。まさか、連絡先の欄にファレナお兄様とレオナお兄様以外の名前が追加されるなんて…！

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