三二日 ページ33
「や、やったぁ」
森畠は感動を口にする。
他の者はそんな小さな事で何故そこまで感動するのかと鼻で笑うのだろうが、森畠にとっては大きなものだった。
「かすっただけだ。喜ぶのは早いぞ」
「はい!」
自信に満ち溢れていた森畠は、谷垣の言葉を飲み込み再度銃を構える。
「撃て」
パァン_______________
――――――
数日後、再度銃の訓練があった。
勿論指揮官は尾形上等兵。
今日こそ尾形上等兵を見返してやるんだ·····ッ
よし。心をしっかりもて!自分!
そう自分を励まし、森畠は言われるままに銃を構える
「用意·····撃てッ!!」
バンッ!!
ゆっくりと目を開ける。
銃口から煙が出ているのを目で下へ下へと伝って見ると、的には弾はかすっておらず、雪の上にあるのは血の飛び跳ねた雀の亡骸だけだった。
「あ·····ぁぁ」
森畠は体から冷や汗がでた。
撃てなかったことより、関係の無い雀を殺してしまった罪悪感と、稽古をつけてもらった谷垣一等卒に申し訳ない。
「おい森畠!お前、谷垣に稽古つけて貰って銃が上手くなったな。的ではなく雀に当てるとは」
尾形上等兵が森畠を冷やかす。
それに釣られて周りの者も森畠を笑った。
もう、今の自分は正常な心ではいられなかった。
チラリと涙目で谷垣一等卒の方を見やると、とても心配そうな表情でこちらを見ていた。
そして身振りで目を開けろと言う合図をした。
そうか、目を開けていなかったからか
森畠は開き直り、また自分が撃つ時には先程の事など忘れきっていた。
目を開けろ、目を開けろ、目を開けろ、
重心を下へと押し込むようにする。
風向きを見る。今は、東から風が来る。
そして銃から伝って真っ直ぐ的を睨みつけた。
「用意、撃て」
バン!
銃は空間を、風を切り裂き的へと向かった。
ど真ん中に弾は命中した。
皆こちらを見て唖然としている。
よし、一泡吹かせてやったぞ。
心の中で喜びの舞を踊っている森畠はどうだと言わんばかりの表情で尾形を見た。
しかし、尾形の表情は虚ろな無表情。
とても拍子抜けだった。
命中したのに·····驚いてくれない。
先程の喜びが尾形の表情でどん底に突き落とされる森畠だが、森畠を見ている谷垣の表情はとても嬉しそうな表情なので、森畠も元気を取り戻した。
そんなこんなで銃の訓練は終了した。
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赤青ほとゝぎす(プロフ) - 忍者氏さん» コメントありがとうございます!はいっ勇作さんも大好きで大好きで予定より早めですが登場させました!あの笑顔って営業スマイルって呼ばれてるんですね…!(伝わってるのがすごい)笑顔がぎこちない尾形上等兵も大好きでこちらも登場させました! (2019年2月13日 18時) (レス) id: e1ece6f77f (このIDを非表示/違反報告)
忍者氏(プロフ) - こんばんは!勇作さんでましたね…!尾形の営業スマイルが思い浮かびます笑今回のお話もとても好きです( ´∀`) (2019年2月13日 0時) (レス) id: 5510d14e32 (このIDを非表示/違反報告)
赤青ほとゝぎす(プロフ) - 忍者氏さん» こんばんは!私ニコニコ初めてだったんですが、まさか.....反応してくださるとは思ってもいませんでした(--;)そして、最近最新なくてすみません。勉強の野郎が邪魔をしてくるんです.....w (2019年2月4日 22時) (レス) id: e1ece6f77f (このIDを非表示/違反報告)
忍者氏(プロフ) - めろんMiiです!お久しぶりです。ニコ生面白かったですね…僕もなにかコメントすればよかったです笑 (2019年2月4日 19時) (レス) id: a461264cdc (このIDを非表示/違反報告)
赤青ほとゝぎす(プロフ) - めろんMiiさん» ありがとうございます!(●´▽`●)やっぱり男前のキャラはカッコよく登場させなければと言う使命感が働きまして...^^ (2019年1月4日 14時) (レス) id: e1ece6f77f (このIDを非表示/違反報告)
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