検索窓
今日:2 hit、昨日:2 hit、合計:57,220 hit

. ページ9




 風を斬るようにして走るAの視線の先に、あの三人と役人がいた。

 剣の柄を握る。重いその剣を力任せに引き抜き、役人の持っていた提灯を斬りつけ、その勢いのまま三人の前に躍り出た。




「なんでお前がここにいるんだ!!? A!」




 銀時がそう叫ぶ。しかしAはそれに応えず、剣を持って構えたまま役人を睨んだ。


 どこかで見た事のある役人。少し思考を巡らせれば、何度か塾にやって来た役人だった。どうやら彼等もAの事を知っているようで、Aを視界に入れた瞬間唾を飛ばした。




「貴様、どれだけ我々の邪魔をすればよいのだ!」




 松陽には、やりすぎないようにと言われている。

 どこまでがやりすぎなのか、線引きが分からないが――。


 砂を踏みしめて走り出そうとした時だった。強い力で着物が引かれ後ろに倒れそうになる。
 着物を引っ張ったのは桂だった。




「何をしてる!!」




「君こそ――」




 は、としてAが役人の後ろに目を向ける。役人は今にも剣を抜こうとしていたところだった。




「――抜かないでください。そのまま、剣をおさめていただきたい。両者とも。どうか私に、抜かせないでください」




「吉田松陽、貴さっ……――」




「私の事を好き勝手吹聴するのは構いません。私が目障りなら、どこへなりとも出ていきましょう。……ですが」




 剣が割れる音。――松陽の表情が、瞳が、冷たく冷酷に役人たちの眼に映った。




「剣を私の教え子達に向けるのならば、私は本当に、国家位転覆しても構いませんよ」




 悲鳴を上げて逃げて行く役人たち。それを追いかけようとするAだったが、松陽に止められる。

 松陽は三人に向き直る。どうやら無理をしたわけではないらしい。

 桂が言う。松陽がいる所なら、どこでも学舎だと。




「……やれやれ、銀時。こりゃまた君以上に、生意気そうな生徒を連れてきたものですね」




「そうだろ」




 鼻をほじっていた銀時は鼻くそを指で飛ばす。


 微笑む松陽は徐に並ぶ三人の前に立つと「路傍で授業を一つ」と腕を挙げる。

 次の瞬間、強烈な拳骨が三人の頭に振り落とされ、三人は順に地面に埋まってしまった。
 衝撃にAは肩を揺らす。

 松陽はいたって笑顔だ。




「ハンパ者が夜遊びなんて100年早い。――松下村塾へようこそ」



 

猫の道→←.



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (95 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
205人がお気に入り
設定タグ:銀魂 , 高杉晋助 , 坂田銀時   
作品ジャンル:アニメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

ルアルア(プロフ) - 無影灯さん» コメントありがとうございます!更新が遅くお待たせしてしまうことも多いかと思いますが、これからも応援していただけると嬉しいです! (2020年3月29日 17時) (レス) id: 013413cedf (このIDを非表示/違反報告)
無影灯(プロフ) - 見入っちゃいました…とても素敵なお話でした!更新応援してます! (2020年3月23日 21時) (レス) id: 26d889b496 (このIDを非表示/違反報告)
ルアルア(プロフ) - 神月さん» コメントありがとうございます!ありがたいお言葉本当に感謝します...相変わらずの低浮上ですが、読者様のお言葉を励みに頑張ってまいります!! (2018年8月30日 10時) (レス) id: 61b26fbf84 (このIDを非表示/違反報告)
神月(プロフ) - 読み応えがすごくあります!次の話がとても気になります!面白いです!作者様のペースで、更新頑張ってくださいね。応援してます! (2018年8月27日 6時) (レス) id: 52a5891399 (このIDを非表示/違反報告)
ルアルア(プロフ) - ginさん» コメントありがとうございます! 更新は相変わらず遅いですが、面白いと思っていただけるような作品を目指して頑張って行きます! (2018年7月8日 9時) (レス) id: 013413cedf (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ルアルア | 作成日時:2018年4月7日 3時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。