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 何度も高杉を通す度、彼の顔に傷が増えていくのに気付いた。しかし、Aはそれについて何か言うでもなく、ただ彼を門を潜らせていた。

 おそらく、彼は触れられたくはないだろう。

 自分の顔にできた傷に。塾生たちに、父親によってつくられた傷に。


 銀時に何度も立向う高杉。日を重ねていけばいくほど、二人の間に小さな会話が生まれていた。



 ――今日こそは勝ってやる
 ――……うん


 ――お前、いつもここにいるな
 ――それが私の役割だから


 ――……よお
 ――今日は多分、負けちゃうよ
 ――はあ!?



 そして今日も――高杉は訪れた。




「なあ、今日は勝てると思うか?」




 もう数えるのも面倒になった頃、高杉はAにそう問いかけた。


 Aは小首を傾げ、緩く笑んだ。




「うん。今日は、勝てるよ」




「……はは、何を根拠に言ってんだよ。――ありがとな」




 そう言って道場の中に入って行った高杉。その後姿を眺めるAの背後に、桂が立った。




「――今日も?」




「ああ。失礼する」




 どうぞ、と道を開けたA。桂はその横を通り抜ける。


 もううちの門下生ですね、と松陽が言っていたのを思い出す。まさにその通りだ。そのきっかけが道場破りとその見守りとはまた一風変わっているが。


 縁側の方で、松陽が手招きする。Aはそちらへ駆け寄った。




「道場破りさんは、今日は勝てそうですか?」




「うん、今日は、勝つと思う。銀時の無敗伝説は今日で終わるんじゃないかな」




「無敗伝説ねえ……。Aに何度か負けてるのに、銀時は」




うちの生徒(ほかのこ)がいない時だったし、別にいいかなって」




 困ったように笑った松陽は、ぽんとAの頭を撫でる。




「さあ、見に行ってみましょうかね」




「うん」




 草鞋(わらじ)を脱いだAは先を歩く松陽の後をゆるりと追う。道場が近付くとピンと張り詰めた空気を肌に感じた。

 入り口で立ち止まるA。その視線の先に尻餅をつく銀時とそれを茫然と眺める高杉。


 その途端、わっと道内が盛り上がった。



 

.→←松の下



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設定タグ:銀魂 , 高杉晋助 , 坂田銀時   
作品ジャンル:アニメ
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ルアルア(プロフ) - 無影灯さん» コメントありがとうございます!更新が遅くお待たせしてしまうことも多いかと思いますが、これからも応援していただけると嬉しいです! (2020年3月29日 17時) (レス) id: 013413cedf (このIDを非表示/違反報告)
無影灯(プロフ) - 見入っちゃいました…とても素敵なお話でした!更新応援してます! (2020年3月23日 21時) (レス) id: 26d889b496 (このIDを非表示/違反報告)
ルアルア(プロフ) - 神月さん» コメントありがとうございます!ありがたいお言葉本当に感謝します...相変わらずの低浮上ですが、読者様のお言葉を励みに頑張ってまいります!! (2018年8月30日 10時) (レス) id: 61b26fbf84 (このIDを非表示/違反報告)
神月(プロフ) - 読み応えがすごくあります!次の話がとても気になります!面白いです!作者様のペースで、更新頑張ってくださいね。応援してます! (2018年8月27日 6時) (レス) id: 52a5891399 (このIDを非表示/違反報告)
ルアルア(プロフ) - ginさん» コメントありがとうございます! 更新は相変わらず遅いですが、面白いと思っていただけるような作品を目指して頑張って行きます! (2018年7月8日 9時) (レス) id: 013413cedf (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ルアルア | 作成日時:2018年4月7日 3時

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