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「――……謝罪が、一番嫌いだよ」
「どうしたんだよ、いきなり」
私と銀時だけの、月の光が煩い夜。
坂本が帰っていく姿を思い出して、一人そんなことを誰に向けるでもなく言い零した。それを拾った銀時をふと見上げて、彼は泣きそうな顔だな。と笑った。
ごめん。すまない。それはどんな言葉よりも残酷だ。重く、人に許しを請うもの。謝罪を口にされた側は、言葉を噛み締めて諦めるしかない。それが、相手にはまったく非が無いと分かっていれば、余計に。
はぁ、と吐息をしたその間に膝を抱える。割れた爪が目に入って、哀れだな、と自嘲した。
本当は、坂本にある限りの罵倒を浴びせてやりたかった。……それなのに。
――――わしは降りる。だけんど、おまんらがいる。それなら、もう心配はないき
――――……おまんが一体どんな思いでこの戦争に参加しているかはわからんが、これだけは言っておくぜよ
「"自分を捨てるな"なんて、意味が分からないことを……」
そうしなければ、あの人を救えないのに。自分を捨てて、目的のために奔走しなければ、真っ先に死ぬのは間違いなく自分だ。
はは、と笑い声が小さく上がる。
ここまで、人が離脱することに執着するとは思わなった。戦場は常に人が死ぬ。だから仲間に対しては常に冷静であり冷酷だと、そう決めつけていた。
――そのはず、だったのに。
坂本の背中を見送っていると、ああ、どうして、と悔やんだ。怪我をした自分が憎かった。もしもまだ動けていたら? 傷などなくて、いつも通りに動けて、剣を振るえていたら?
"あの日"も、私の力不足で先生は天道衆に連れて行かれてしまった。私がもっと強くて、守れるほどの力があれば。
「……たらればの話をしても意味がないなんて知っているのに、それでもしてしまうのが性なのかな。もっと強ければだとか、あの時こうしていればよかっただとか、そんなことを繰り返してしまうのが愚かだと、……私を引き留める人が、いないのにね」
私の独白を、銀時はただ黙って聞いていた。相槌も、言葉を聞くための視線すらも寄越さない。
ぐ、と身体を突然寄せられた。気づいた時には、銀時の胸の中に納められていて、安心感すら覚える彼の匂いに目元が熱を帯びた。
「……俺はお前を引き留められねぇ。ただ、隣にはいてやれる」
涙を隠すために、銀時の胸板に額を押し当てた。
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ルアルア(プロフ) - 無影灯さん» コメントありがとうございます!更新が遅くお待たせしてしまうことも多いかと思いますが、これからも応援していただけると嬉しいです! (2020年3月29日 17時) (レス) id: 013413cedf (このIDを非表示/違反報告)
無影灯(プロフ) - 見入っちゃいました…とても素敵なお話でした!更新応援してます! (2020年3月23日 21時) (レス) id: 26d889b496 (このIDを非表示/違反報告)
ルアルア(プロフ) - 神月さん» コメントありがとうございます!ありがたいお言葉本当に感謝します...相変わらずの低浮上ですが、読者様のお言葉を励みに頑張ってまいります!! (2018年8月30日 10時) (レス) id: 61b26fbf84 (このIDを非表示/違反報告)
神月(プロフ) - 読み応えがすごくあります!次の話がとても気になります!面白いです!作者様のペースで、更新頑張ってくださいね。応援してます! (2018年8月27日 6時) (レス) id: 52a5891399 (このIDを非表示/違反報告)
ルアルア(プロフ) - ginさん» コメントありがとうございます! 更新は相変わらず遅いですが、面白いと思っていただけるような作品を目指して頑張って行きます! (2018年7月8日 9時) (レス) id: 013413cedf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ルアルア | 作成日時:2018年4月7日 3時