検索窓
今日:4 hit、昨日:2 hit、合計:57,224 hit

狭間 ページ26

狭間






×××





 高杉は、目の前で横になって眠るAを見つめていた。静かに寝息をたてて、そして時折苦しそうにあえぐAが流す汗を拭ってやる。

 高杉とAが戻って来ると、しばらく彼らの根城は騒然としていた。殿を務めもう戻ってこないのではと思われた彼女と、その彼女を探しに行くと言って姿を消した高杉の二人が帰って来たからだ。傷だらけで、酷い熱のあるAを早く治療してやってくれと言った高杉が、素早く彼女の部屋へ入って行く。皆、その背中を茫然と眺めるだけだった。


 銀時が先程Aの容体を確認しに来た。「俺がいるからお前は休んでろ」銀時の目の下には隈ができていた。彼女が戦場に一人残ったことを知ってから、ずっと彼女の身を案じていたのだった。
 二人が戻ると、安心した顔をしていたのはまだ記憶に新しい。





「――A」





 うぅ、と呻いたAが眉間に皺を寄せ、瞼を押し上げた。身体を寄せると、Aはかすれた声で晋助、と呟く。「ああ、ここにいる」高杉の存在を確かめるかのように、Aは白い手を伸ばして高杉に触れた。





「みんなは」





「無事だ」





「ここは」





「根城だよ。戻ってこれたんだ」





「そっか……、よかった、ありがとう……晋助」





 安堵の微笑を浮かべたAがふぅ、と吐息する。彼女の掌は燃えるように熱い。きっと、刀傷を受け、そして雨に長い間受けていたから体調を崩してしまったのだろう。
 「体調はどうだ」「身体の節々が痛いよ」「しばらくは休め」「……うん。ねぇ、晋助」





「どうやって、私を見つけたの」





「……お前がどこにいるかぐらい、すぐにわかる」





「ふふ……、そっかぁ」





 Aが力なく笑う。ずいぶんとやつれたように思う。一人で誰かの助けを待ち、そして迫りくる死を感じていたあの時、Aは何を思っていたのだろうか。
 心細かったかもしれない。恐怖すら感じたかもしれない。そして、高杉が迎えに来て、安心したのだろう、彼がAを抱き上げたあとすぐに眠りに就いてしまった。





「……飯、いるか」





「いいよ。大丈夫。晋助」





「なんだ」





「もう一つだけ、聞いてもいいかな」





「ああ」





「私は、足手纏いじゃない?」

.→←.



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (95 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
205人がお気に入り
設定タグ:銀魂 , 高杉晋助 , 坂田銀時   
作品ジャンル:アニメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

ルアルア(プロフ) - 無影灯さん» コメントありがとうございます!更新が遅くお待たせしてしまうことも多いかと思いますが、これからも応援していただけると嬉しいです! (2020年3月29日 17時) (レス) id: 013413cedf (このIDを非表示/違反報告)
無影灯(プロフ) - 見入っちゃいました…とても素敵なお話でした!更新応援してます! (2020年3月23日 21時) (レス) id: 26d889b496 (このIDを非表示/違反報告)
ルアルア(プロフ) - 神月さん» コメントありがとうございます!ありがたいお言葉本当に感謝します...相変わらずの低浮上ですが、読者様のお言葉を励みに頑張ってまいります!! (2018年8月30日 10時) (レス) id: 61b26fbf84 (このIDを非表示/違反報告)
神月(プロフ) - 読み応えがすごくあります!次の話がとても気になります!面白いです!作者様のペースで、更新頑張ってくださいね。応援してます! (2018年8月27日 6時) (レス) id: 52a5891399 (このIDを非表示/違反報告)
ルアルア(プロフ) - ginさん» コメントありがとうございます! 更新は相変わらず遅いですが、面白いと思っていただけるような作品を目指して頑張って行きます! (2018年7月8日 9時) (レス) id: 013413cedf (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ルアルア | 作成日時:2018年4月7日 3時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。