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「――なんでお前らと……」
ぶつぶつ文句を言う銀時。脚は目的地まで真っ直ぐ進んでいる。
松陽に言われては流石の銀時も断れないのだろう、あの後、しぶしぶ二人が着いて来ることを頷いた。松陽には何を言っても通じないことを知っているからだ。
松陽に渡された提灯を桂は掲げながら、銀時の歩く道を照らす。月明かりだけは当然心もとない。
――――こんな暗い中でAは一人でいるのか?
高杉や銀時、桂ならまだしも、女であるAに至っては何があるか分からない。普通はもっと心配するものではないのか、桂は一人疑問を抱いていた。
「Aなら心配いらねえよ」
「え?」
「あいつ、あの見た目で俺より強えから」
二人が眼を見張る。あのAが?
確かにあの役人たちを相手した時、今までに感じた事のない感覚があった。いうなれば、蛇に睨まれた蛙といったところ。
身の丈よりも少し短い打刀をいつも抱えるAが稽古をしているところなどほとんど見ないが――。
長い階段を前に、銀時の言葉を待つ二人だが銀時は一向に何も言わず、ただ淡々と階段を上って行く。
二人は一度顔を見合わせ、取りあえず当初の目的を達成すべく銀時の後を追う。
――階段の途中、森の中から何かが動く音が響く。その音は素早く上まで登って行った。
前を歩く銀時の様子がおかしいと気付いたのは、その音が増え、そして消えた時。明らかに階段を上る脚が遅くなっている。
「……お前、怖いんだろ」
「はっ、はあ!? ンな訳ねーだろ、な訳ねーよ!」
「何で二回言った?」
だらだらと汗を流す銀時はぎこちない笑みを浮かべる。
まさかこいつにこんな弱点があったとは、高杉は一人にやりと笑った。
「――おい」
不意に、桂が二人の肩を叩く。桂の方を向いた二人は、彼が見る方向に目を向けた。すぐそこの寺の入り口、鳥居の所に黒い小さな影がこちらをじっと見つめていた。
ひ、と銀時が小さく声を上げる。
臆することなく高杉が階段を上ると、蜘蛛の子を散らすようにその影が寺の奥へ消えていく。そんなことあるのか、と桂が小さく呟いた。
「お、おーい……Aー……?」
銀時がおそるおそる境内の中に声を掛ける。鬱蒼とした木々の中にぽつんと建つ寺社は、夜というだけでうすら寒い何かを感じた。
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ルアルア(プロフ) - 無影灯さん» コメントありがとうございます!更新が遅くお待たせしてしまうことも多いかと思いますが、これからも応援していただけると嬉しいです! (2020年3月29日 17時) (レス) id: 013413cedf (このIDを非表示/違反報告)
無影灯(プロフ) - 見入っちゃいました…とても素敵なお話でした!更新応援してます! (2020年3月23日 21時) (レス) id: 26d889b496 (このIDを非表示/違反報告)
ルアルア(プロフ) - 神月さん» コメントありがとうございます!ありがたいお言葉本当に感謝します...相変わらずの低浮上ですが、読者様のお言葉を励みに頑張ってまいります!! (2018年8月30日 10時) (レス) id: 61b26fbf84 (このIDを非表示/違反報告)
神月(プロフ) - 読み応えがすごくあります!次の話がとても気になります!面白いです!作者様のペースで、更新頑張ってくださいね。応援してます! (2018年8月27日 6時) (レス) id: 52a5891399 (このIDを非表示/違反報告)
ルアルア(プロフ) - ginさん» コメントありがとうございます! 更新は相変わらず遅いですが、面白いと思っていただけるような作品を目指して頑張って行きます! (2018年7月8日 9時) (レス) id: 013413cedf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ルアルア | 作成日時:2018年4月7日 3時