猫の道 ページ10
猫の道
×××
「なあ、Aは?」
竹刀を振る度、風が唸る。一度、また一度と振り被れば、額から流れた汗が道場の床に落ちていった。もう陽が落ち始め、空は赤みを差し始めている。
稽古が終わり汗を拭っていた高杉は、隣で同様に息を整えている桂にそう言った。今日は珍しく朝からAの姿を見ていない。
――というのも、まるで猫のように気まぐれな性格のAは道場に来る日もまちまちで、更には稽古をしているところすら滅多に見ないほど。あの松陽ですらAの行動を把握するのは難しいと言う。
銀時が竹刀を床に置いて、どさりと座り込む。口を大きく開けて長い欠伸をした銀時は壁に背を預け、そのままずるずると寝そべるように下に下がっていった。
「あいつなら、今頃寺にいるんじゃねーの?」
半ばぶっきらぼうに言い放った銀時は、そのまま寝る準備を始める。あまりに自然と零したものだから、高杉は聞き返してしまったが、桂が銀時の言葉を復唱する。何故寺なんかに、と。
何か知っているのだろう、しかし銀時はそれから何も言わない。高杉が銀時に口を開いた時だった、道場に松陽が入って来た。
辺りを少し見渡し、やがて高杉達に気が付くと柔らかな笑みを浮かべて三人の元へ歩いて来る。
「銀時、君に頼みたいことがあります」
「……どうせAだろ」
長い溜息の後、銀時は面倒臭そうに立ち上がる。
「――Aのこと、ですか?」
「ええ。今日は珍しく、帰って来るのが遅いので……。私が探しに行ってもいいのですが、これからやることもあるんです」
「なら、俺が行くよ、先生。……どうせ、銀時じゃ役不足だ」
高杉が銀時の方をちらりと見て言う。煽るような言い方に、銀時はカチンと来たのか高杉に食ってかかるも桂の仲裁により引き下がった。
「それじゃあ……」相変わらず笑顔のまま、松陽は何事もなかったように続ける。
「君"たち"、ちょっと行ってきてください」
205人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「銀魂」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ルアルア(プロフ) - 無影灯さん» コメントありがとうございます!更新が遅くお待たせしてしまうことも多いかと思いますが、これからも応援していただけると嬉しいです! (2020年3月29日 17時) (レス) id: 013413cedf (このIDを非表示/違反報告)
無影灯(プロフ) - 見入っちゃいました…とても素敵なお話でした!更新応援してます! (2020年3月23日 21時) (レス) id: 26d889b496 (このIDを非表示/違反報告)
ルアルア(プロフ) - 神月さん» コメントありがとうございます!ありがたいお言葉本当に感謝します...相変わらずの低浮上ですが、読者様のお言葉を励みに頑張ってまいります!! (2018年8月30日 10時) (レス) id: 61b26fbf84 (このIDを非表示/違反報告)
神月(プロフ) - 読み応えがすごくあります!次の話がとても気になります!面白いです!作者様のペースで、更新頑張ってくださいね。応援してます! (2018年8月27日 6時) (レス) id: 52a5891399 (このIDを非表示/違反報告)
ルアルア(プロフ) - ginさん» コメントありがとうございます! 更新は相変わらず遅いですが、面白いと思っていただけるような作品を目指して頑張って行きます! (2018年7月8日 9時) (レス) id: 013413cedf (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ルアルア | 作成日時:2018年4月7日 3時