属性別男子【オリジナル】

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「……勘違いじゃないし､嫌いにもなってないんだから､何も問題ないだろ」

「……え､」

「少なくとも､俺は好きでもない奴にあんな口説くような台詞言わない」



――――どうやら私は口説かれていたらしい｡

涙は完全に引っ込んだが､今度は頬が熱い｡
変な汗も出てきた気がする｡心臓がいたい｡



「……好きだよ｡お前が俺のことを好きになってくれる前からずっと」



余りにも直接的な言葉に心臓が締め付けられそうになる｡

思わず､目の前の彼に抱き着いた｡
暫くして､恐る恐るという言葉がぴったりなほど慎重に背中に手が回る｡
キスはあんな自然にするのに､ハグはぎこちないのか､と､少しだけ笑ってしまった｡




*




「おはよう佐藤くん！」

「おはよう」



次の日､登校してきた佐藤くんに声を掛ける｡
佐藤くんは極めて穏やかに挨拶を返してくれた｡

彼は私の隣の席にカバンを置き､席に着く｡いつもの光景だ｡

……

…………ん？



「…………え？佐藤くん？」

「どうした」

「いやなにしてんの佐藤くん､もう席私の隣じゃないじゃん」



いやそりゃ私も佐藤くんの隣が良いけども｡幾らなんでもそれは｡
慌てふためく私をよそに佐藤くんは真顔で教科書を出している｡



「……お前の言う通り､人と話すことは大事だなと考え直した」



……は？と､あと一歩のところで口に出るところだった｡
余りにも脈略を得ない｡一体どうしてしまったんだ｡

だって､佐藤くんの席は一番前だったはずだ｡
ふと佐藤くんの元々の席に目線をやる｡

――――そこには私の隣の席だった男の子がいた｡
こっちを見てピースサインを掲げている｡



「彼奴は目が悪いらしい､担任にも話して交換してもらった」

「…………」



絶句であった｡

必要以上に人と会話をしてこなかった彼が､
私と隣になるためだけに友達と担任に交渉をしてきたのだ｡

確かにあの男の子は目が悪かったけど､
でもあのはしゃぎっぷりは事情を把握した上での協力だろう｡そこまで話をしたのか｡



「…………え､ねえ､もしかしてさ､佐藤くんって私のこと大好きだったりする？」

「……今更だろう」






――――やっぱり､私はとっても恵まれた人生を歩んでいると思う。



私の周りにいるのは､仲の良い友達に､先輩後輩､優しい先生､
そして隣の席に座っているのは､私の大好きな彼氏｡

　

ああ､めちゃくちゃ幸せだ｡
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