10月、恋は現在進行形。【まふまふ】【お話つめあわせ】

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名前も知らなかったはずのあの子は、

自分の弟のように可愛がっていた男の子で。


まだ生まれたばかりで病院にいたときも、

初めて自分の足だけで歩いたときも、

幼稚園の友達と先生が怖くてうずくまったときも、

卒園のことばを完璧に読み上げたときも、

小学校で友達ができなくて悩んでいたときも、

テストで１００点取ってドヤ顔で帰ってきたときも、

私が高校の寮に入るって知って大泣きしたときも、

私がずっとそばにいた、世界中の誰よりも可愛い男の子で。


一緒におしゃべりして笑って、

離れたくなくて泣いて、

悪いことしたときに怒って、

感情のすべてをさらけ出した、心友の男の子で。


まふくんは無事次の電車に乗れたらしく、

『いつだったら会える？ 久しぶりにいーっぱいおしゃべりしたい！』

なんて彼氏みたいなメッセージを送ってきた。

一緒に送られてきた、可愛いてるてるぼうずのスタンプは、私の高鳴る鼓動と同じテンポでぴょこぴょこ動いている。



名前と学年と住んでいる場所は、もう知ってる。

だから、今の好きな食べ物と、いつも聴いている音楽と、彼女がいるのかを聞かなくっちゃ。

今までは、一生知ることはない、知ることはできない、と思っていたこと。

それを直接聞ける幸せが、私の表情を緩ませる。

ああもう、こんなにゆるゆるの顔して会社行けないじゃん。

ぜーんぶまふくんのせいだ。あーなんて幸せ。


それから、まふくんを突き飛ばしたあいつらとの関係も聞かなきゃ。


次会ったときに聞きたいこと、いっぱいあるな。



電車の中でしか会えなかったから、私は無理して満員電車に毎日乗ってたんだよ。

大嫌いなはずの満員電車も、あの子に会えるってだけで大好きな気がしてくるくらい、あの子に会いたかった。

ぜーんぶあの子に会いたかったから。




でも、もういつだって会えるから。




ばいばい、だいきらいでだいすきな満員電車。

あまくてにがい、コーヒーひとつぶ。→←＊

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