【あんスタ】夜行少女【逆先夏目】 (ページ50)

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4章　夜の街を共に( 3 ) ページ50

照れ臭くて逸した視線も戻せないまま黙っていれば不意に夏目くんが私の手を取る。淡い赤色を散りばめた指先を眺めては「…野良猫ちゃんはネイルを塗るのも上手なんだネ、手先が器用なのかナ。」なんて褒め出すものだから、いよいよ頬に熱が募るを感じた。

「あ、ありがとう。せっかくのお買い物だからさ。誰かと一緒に買い物をするなんて久し振りだし、ちょっとくらいおめかししちゃおうかな、って…。」

「…フフ、ボクとのデートを楽しみにしてくれてたんダ？奇遇だネ、ボクもAちゃんとのデートは楽しみだったんダ♪」

彼からなんだか、とんでもない発言が聞こえてきた気がする。デート？………男女で出掛けるものは、デートになるのかな。

思考がキャパオーバーを引き起こして瞬きもせずに固まってしまうと夏目くんは耐え切れなくなったのかクスクスと笑みを漏らし始めて、「アハハ、揶揄い過ぎちゃったかナ？ごめんごめン…♪」と私の頭を軽く撫でてくる。

撫でる手付きは嫌じゃないけれど、恥ずかしいものは恥ずかしい。素直になりきれなくなった私は小さな悪態を一つ、彼について見せた。

「…………、……夏目くんのおばか。」

こんなにも恥ずかしいのに、揶揄われる側はたまったものじゃない。なんだか、いつも彼には振り回されてしまっている気がする。…ちょっと自分が情けなくなった。

「そう拗ねないデ、野良猫ちゃん。ボクとのお出掛けの為にして来てくれたお化粧モ、綺麗なネイルも全部君に似合ってるのは本当なんだかラ。」

「……うん、ありがとう。そう褒めて貰うことなんて無かったから、慣れないというか恥ずかしいというか…。…でも、いやじゃないよ。お出掛けが楽しみだったのは私も同じだったから。」

私を見詰める蜂蜜色の瞳が嘘を言っているようには見えなくて、もしその言葉が何時もの気軽な彼の嘘でも嬉しいお世辞には変わりない。素直に私もお礼を言えば夏目くんも何だか嬉しそうに微笑んでくれた。

「…それじゃア、そろそろ行こうカ。立ち話も良いけド、早めに見に行かないと閉まっちゃうお店も多いかもしれないからネ。」

「そうだね、この辺のお店は割と遅くまで開けててくれてるお店もあるけど普通のお店はもう少し早めに閉まっちゃうもんね。それじゃあお店が閉まっちゃう前に見に行こっか。」

互いに頷きあえば肩を並べて歩き始める。私は彼処へ行きたい、ボクは彼処ニ、と言葉を交わしながら歩くのがとても楽しく感じた。