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3章 小さな世界( 4 ) ページ35

ともあれ風邪を引いてしまった以上はもうどうしようもない。


…すごく申し訳ないけれど、私は夏目くんにお願いする事にした。



「……………じゃあ、夏目くんにお願いしてもらえる?」


「うむ、我輩に任せとくれ。逆先くんは我輩の言う事なら大抵聞いてくれるからの♪」


楽しそうに語る零。普段も穏やかではあるが、こんなに楽しそうな零はあまり見ないかもしれない。

ふと、気になって尋ねてみた。



「………夏目くんと零ってどんな関係なの?」


すると、何処か寂しそうに、


「そうじゃな……大事な大事な、我輩達の愛し子じゃ。」



そして、言葉通り愛おしそうに言って笑った。


──────


それじゃあそろそろ日が昇るから、と自宅へ帰っていった零と凛月。部屋に残ったのは病人の私一人。


この時間はまだ、日が昇る前なので普段なら私の身体も幾らかは動く。…今は、風邪も相まって殆ど力が入らないけれど。


夜明け前、何時も通りならこの時間はシャワーを浴びて寝る準備をするんだけれど、今はこの通り風邪を引いているからシャワーなんて浴びられない。


精々出来た事と言えば、零が帰る前に用意してくれた濡れタオルで身体を拭く事くらいだった。



買ってきてもらったスポーツドリンクを少し飲み、作ってもらった氷枕へ頭を置く。


そうすると視界に映るのはまじまじと見ることがない部屋の中。


夜明け前、という時間帯も相まって部屋の中は薄暗いがほんのり部屋の景色が見える。



今ではゲームをやる時にしか使わないテレビや読書をする時に座る小さなソファ、食事をするときに使うテーブル、その下に敷かれた赤色のラグ、昔勉強する時に使っていた机。……今ではそこに座る機会も減ったが。


こうして見ると部屋に置いている物は昔から変わっていない気がする。風邪が治ったら模様替えするのも良いかもしれない。


なんて、考えていれば少し引っかかりを覚える。



昔から、変わらない。………昔って、いつ?


部屋に置かれているインテリアは割と前に買ってもらった物で新しくはない。


けれど、そのインテリア達をいつ買ったのか、思い出せないのだ。


…風邪で頭が回らないだけ、だろうか。…にしては、すっぽりと思い出せない、様な。



そんな不思議な感覚に陥るものの、きっと風邪のせいだろうと決め付ければもう時期来る夜明けに向けて、私はゆっくりと瞼を閉じた。


次に目覚める時には熱が少しでも下がっていると良いんだけれど。

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エンドロール - すごくこの作品好きです!描写も細かいし何より読みやすくて面白い!これからも頑張ってください、応援してます。 (2020年1月18日 13時) (レス) id: feeead544b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ドロップ | 作成日時:2020年1月15日 9時

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