急患 ページ9
「樹って好きな人とかいないの?」
「Aって、そんな恋バナなんかするキャラやっけ?」
「い、いいでしょ、」
「別にいないけど、」
樹の施術中に私が普段聞かないようなことを聞いてみた。それも彩音に頼まれたこと。
「ごめん…、彩音、」
「もー!本当に?とか聞きなさいよ!」
ごめん、と先程からひたすら謝り続けている。っていうか別に私が悪い訳じゃなくない?
「急患です!」
「っ!今行きます、ごめん、彩音」
ストレッチャーに乗って運ばれてきたのは、
「高山さんっ!?」
痛みで顔をゆがめている高山さんだった。
「CTとMRIとレントゲン準備できてます」
「1,2,3っ!」
高山さんはアキレス腱断裂。リハビリは私が担当することになった。
VIP室の中で沈黙が続く。
「高山さん、「ごめんな、」えっ?」
「迷惑かけたばっかりだし、…かっこ悪いとこばっかり見せてるから」
「…私は、怪我することはかっこ悪い事じゃないと思いますよ、」
そう言うと、高山さんが動き出した。
「いだっ…」
そりゃ、痛いでしょ…。
「何してるんですか、したいことがあったら言ってください」
「じゃあこっち来て、」
言う通りにベッドに座っている高山さんの隣に座ると、
「ごめん、今だけこうさせて」
そう言って私の体を抱きしめる高山さん。
それはいつもの凛々しい姿ではなく、弱々しい姿だった。
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作者名:renren | 作成日時:2023年2月2日 18時