4-多対一 ページ5
無駄の無い動きで間合いを詰めたガブリアスは、先陣に立つ男の側に控えていたニャルマーの、その細い胴体から顎下にかけて、逆手で掻上げるようなドラゴンクローを繰り出す。
小さな体には堪らない一撃となったことだろう。
黒ずんだ爪に瞠目した男は尻餅をついて、ガブリアスの巨体から離れるように後退いた。
『良い判断よガブリアス。初動で体力を削るげきりんを使うのはリスキーだもんね…』
攻撃を終えて戻ってきた彼の体を撫でてやれば、褒められたと喜んだのか頭を胸に押し付けてくる。その力強さに頬が緩んだ。
『まだバトル中だってのに甘えん坊さんね、よしよし。
今の攻撃よく入れたよ』
「てめぇ!よくも俺のニャルマーを…!やっと幹部から支給されたポケモンだってのに……」
何事かを口の中で呟きわなわなと拳を震わせる男。…尻餅をついた体勢でそれなのだから、私から見たら迫力の欠片も無いけれど。
兎に角、一人と一体はもう戦闘不能という訳で。
『トゲキッスはシャドーボール!その間、ガブに翼を貸してあげて!』
私の腕の中に顔を埋めたガブリアスも、私が声色を張り詰めれば瞳孔を大きくして、再び彼等に向き直り、威嚇に喉を鳴らす。
その大きな背に守られた私は、この世の誰よりも安全でいられる。
滑空しながら地上に接近したトゲキッスに、強靭でいて鞭のようにしなる脚力を用いて飛び乗ったガブリアスは、次の攻撃に備え筋肉を均している。
「い、いつまで飛んでいやがる!ゴルバット共、撃ち落とせ!」
あぁ、しかしゴルバットの毒汁の滴り落ちる牙が、もうトゲキッスに届いてしまう______
・
風と翼がぶつかって生じる揚力の為か、全身から唸るような音を出すトゲキッスの背から飛び降りたガブリアスが、その力強い両腕でもって、毒牙を剥くゴルバット達を引き摺り下ろすものだとばかり考えていた俺は、次の瞬間、少女が紡いだ技名に目を剥く。
『______かみなり』
言葉と同時に、星を隠すようにして夜空に湧き出た雨雲から、パチパチと火花の散る音が聞こえた。しかしそれが、一種の準備体操であることを俺は知っている。
その技を背負って立つ_____たてがみの美しいレントラーが、腹の底から一気に喉元へ突き上げて出たように雨雲に向かって吠えた途端、火蓋が切って落とされたようにして、電撃の筋が上空のゴルバットたちを一体残らず地面へ叩き落とした。
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作者名:Dac | 作成日時:2022年3月15日 20時