【ポケモン】晴天の私、或いは霹靂の貴方【デンジ】 (ページ12)

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11-後ろ姿ページ12

シャワーを終えたことをデンジさんに伝える為、しんと静まり返ったポケモンジムの裏方を歩き回る。表の華やかさとは一変し、徹底して事務的な内装が、何だか意外だった。

『ええと、何処にいるんだろう…入っちゃ駄目な部屋もあるだろうし、勝手にドアを開けて回るのも…』

ぶつぶつと独り言を呟きながら、暫く廊下をぎこちなく歩いていると

『…ん？』

バチバチと____形容するなら、なにか油が弾ける様な音が聞こえた。

その方向に導かれるように歩みを進めれば、開け放たれた扉の奥に、広い、そしてやはり無骨なコンクリートを剥き出しにした無機質な部屋が見え、そこにデンジさんの後ろ姿を発見した。

青いジャケットは無造作に放り投げてあって、彼自身は地べたに胡座をかいて座っている。薄手の黒いシャツを着た背中が丸まっており、その手元が時たま明るく光っているのが見て取れた。

______とても集中しているようで、私が真後ろに立っても気付いていない。

『デンジさん』

風呂上がりでまだ濡れている髪の毛を抑えながら少し屈み、とん、とその大きな背中を控えめに叩く。

すると

彼は弾かれた様に顔を上げる。大声を上げて

「うわっ！」

『わぁ！？』

彼は耐熱ゴーグルのような物を額の位置まで上げ、私の方を振り返った。

「あ、あぁ…Aか、
驚いた…」

『ご、ごめんなさい、吃驚させるつもりはなくて』

むしろこっちが驚いて尻餅をついてしまった。床にへたり込んだ私を見て、デンジさんは慌てた様子で立ち上がる。

「すまない、何時もはこの時間人がいないから…
集中してたもんで、全く気付かなかった」

私の前で腰を下ろし、骨張った背中を丸める彼の端正な顔が、私の顔を覗き込む。鋭い目尻とは裏腹に、その蒼い瞳には心配の色が滲んでいた。

が、当の私はといえば心配どころではなく、後ろに倒れ込んで伸びた私の足に向かって、覆い被さる様な形を取るデンジさんに、思わず心臓が跳ね上がっている真っ最中だった。

______だって顔がすごく近い。

『う、あ…』

彼は冷たい床に打ち付けた私の腰と手を案じてくれているだけなのに…
じり、とバランスを取るために咄嗟に後ろについた指先を僅かに後退させても、その距離感は少しも変わらない。

「どうした、どこか痛めて______」

『いえっ！全然問題ない、です』

……しまった、

今度は、声量を完全に間違えた。

グレーの壁にわんと反響した自分の声と、

「_____そうか。まぁそれだけ元気なら、大丈夫そうだな」

くっと少し笑うデンジさんに、益々顔から火の出るような思いをした。